フランスW杯のメンバー選出は「とにかく驚いた」

日本サッカー界の新たな歴史を刻み、世界との差を肌で感じた伊東は、1998年に日本が初出場を決めたW杯フランス大会のメンバーにも選出された。

「予選の時は一度も代表に選ばれませんでしたが、スイスで行われた直前合宿の時に声をかけていただいて、とにかく驚きましたよ。(W杯出場を決めた)イラン戦も、どこかで観ていたとは思いますが、今ではその時のことをあまり覚えていないような感じですから。そこから代表に選ばれ、W杯に帯同することになろうとはまったく想像していませんでしたね」

本番直前には長年日本代表を支えた三浦知良と北沢豪、当時は若手だった市川大祐の3名が代表から外れ、物議を醸した。

「正直に言うと、『本当に自分がいても大丈夫なのかな……』と思いましたけど、直前で呼ばれた選手ですから、何かを言えるような状況ではありませんでした」と当時を振り返った伊東を始め、日本代表に選ばれた22名の選手たちは、アルゼンチン、クロアチア、ジャマイカの3カ国と対戦することとなった。だが、世界の壁は厚くチームは3連敗。3試合目のジャマイカ戦で、現在は沼津の指揮官を務める“ゴン”こと中山雅史の日本のW杯初ゴールが生まれたものの、世界との差を痛感させられる結果に終わり、チームに帯同した伊東も大会中に出番はなく、そのままフランスの地を去ることとなった。

「試合に出られなかったのは僕の力不足だとは思いますけど、やっぱり『W杯の試合に出てみたかったな……』という気持ちはありました。やっぱりベンチで試合を見つめているのと、実際にピッチに立ってプレーするのは全く感じ方が違うと思うので……。もしかしたらW杯で試合に出られなかった悔しさも、今も現役を続ける原動力になっているのかもしれません」