50歳になった今も伊東輝悦が現役を続ける理由 

2010年に清水を退団した伊東は甲府、長野、秋田と3クラブを渡り歩いた後、2017年からはアスルクラロ沼津に加入し、今季はプロ32年目の選手生活を送っている。

2021シーズンまでは、現在は指揮官として沼津を率いる中山雅史が53歳まで選手生活を続ける姿を間近に観てきた伊東は「毎日地道な筋力トレーニングに取り組むゴンさんの姿を観て、『自分はとてもじゃないけど無理だな……』と思いましたけど、その姿を見ていると『負けられないな』という気持ちも徐々に込み上げてきたんです。沼津は若い選手が多いですが、もし今の僕の姿を見て『頑張ろうかな』と思ってくれるのなら嬉しいですし、若い選手がひたむきにプレーする姿を見ていると自ずと力をもらえる。お互いに良い刺激を与え合いながらプレー出来ているような気がしています」と、現役を続けるモチベーションになっていることを明らかにした。

若い選手に混じって練習で汗を流す伊東だが、今季はまだリーグ戦の出場機会がない。

「やっぱりピッチに立ちたいと思う気持ちはありますが、選手を選ぶのは監督の仕事ですから、自分で決めることは出来ない。長いシーズンを戦う中では絶対に自分が必要とされる瞬間が来ると思うので、その時に向けて腐らずに全力で準備をすることしか出来ないと思っています」と現在の思いを語った伊東は、今年8月に誕生日を迎え、50歳の大台に到達した。孔子の『論語』には「四十にして惑わず、五十にして天命を知る」という言葉もあるが……。

「そんなものはないですよ。来年のことすら全然わからない状況ですから……。」と伊東は苦笑いを浮かべると、自身の選手生活に対するこだわりをこう続けた。

「小さい頃から憧れていたサッカー選手になる夢を叶えて、50歳になった今もボールを追い続けられている。当時はそのような未来が来ることを全く想像できていませんでしたし、とても幸せなことだと思っています。おそらく『まだサッカーをやっているの?』と言われてしまう場面もあると思いますが、サッカーを楽しむことを考えながら、少しでも長く選手生活を続けられたらなと思っています」

伊東が所属するアスルクラロ沼津は、30試合を終えて勝ち点47の4位に付けており、クラブが目標とするJ2昇格を射程圏に捉えている。

「シーズン終盤に差し掛かり、負けられない試合が続いています。長いシーズン中には時に上手くいかないこともあるかもしれませんが、それでも選手たちは、日々のトレーニングの成果をピッチで表現するために毎試合全力で戦っていますし、僕も最後まで良い緊張感を持ちながらベストを尽くしたいと思います。

ぜひ多くの皆さんにもスタジアムに来ていただいて、選手と一緒になって戦ってほしいですし、皆さんの声援の後押しによる大きな力で相手に襲いかかり、勝利を手繰り寄せられたらなと思っています」

今季のJ3は残り7試合。伊東の在籍する沼津は“奇跡”を起こすことが出来るだろうか?

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