引退挨拶を終えると、板前姿の家長昭博がアキレス腱断裂からの復帰を目指す谷口彰悟が登場。中村憲剛はマグロの握りとお茶(あがり)を飲み干すと、寿司桶を掲げての集合写真の撮影で試合は幕を下ろした。
板前姿で登場し場内を沸かせた家長昭博は、「(チームに加入して中村憲剛選手と出会った)2017〜2018年の印象が強い。『当時のチームを作れ』と言われても、なかなか作れないようなサッカーしていましたし、その中心にいた中村選手との楽しい思い出がある。チームメイトであり、ライバルでもある。切磋琢磨できる選手で自分を成長させてくれました」と試合後にコメントした。
「自分の引退試合にどれだけの方が来てくれるか正直不安でしたけども、蓋を開けてみると、これだけ多くの方が来てくれて本当に幸せ者です。試合をやりながら、ピッチの上で『懐かしいな』と思っていましたし、すごく自分も楽しんでやることができました。皆さんも少しでも当時のことを思い出していただけたら幸いです。僕は4年前に引退して、引退セレモニーもしていただいたんですけど、当時コロナ禍で、なかなかチャントが歌えない中で引退しました。でも今日、中村憲剛のチャントを歌ってもらって、その中でプレーして、送り出してもらえて本当に感無量です。みんなの笑顔を見られて幸せな1日でした」と、充実感に満ちた表情でピッチに別れを告げた。
中村憲剛がFRO(Frontale Relations Organizer)を務める川崎フロンターレの現状に目を向けると、8年間チームを率いた鬼木達監督が2024年限りで退任。2017年のJリーグ優勝を皮切りに計7つのタイトルを手にしたが、相次ぐ主力選手の海外移籍もあり今季は無冠に終わった。
来季はアビスパ福岡に初タイトルをもたらしたクラブOBの長谷部茂利新監督の元、新たなチームづくりに着手していくこととなる。
クラブOBでサッカージャーナリストの中西哲生氏(写真左)は、「中村憲剛の引退試合自体がクラブにとっての大きな転換点だったと思います」としつつ、「このような機会が生まれて、これまでフロンターレに関わってきた人々が一堂に会することに意味があったのではないかと思います。久々の出会いによる懐かしさもありますが、(試合に参加した選手のみなさんは)フロンターレサポーターが作ってくれる空間の素晴らしさを改めて感じたと思いますし、『どのようにフロンターレに貢献していくのか』を考えるきっかけにしてくれたら嬉しい」と言及。
「(クラブは)これまでの歴史を受け継ぎながら新しい進化していくタイミングにありますが、『どうすればサポーターの皆さんに楽しんでいただけるのか』を考えながらプレーの以外ことにも取り組んできたこれまでの道のりが間違っていなかったことを確認できましたし、もっとサポーターを楽しませられるかようなクラブにしていかなければならないと思います」と、来季以降のクラブの発展にも期待を寄せた。
選手や指揮官として中村憲剛選手と長い時間を過ごした鬼木達氏は、試合後に「フロンターレの形を植え付けてくれた選手ですし、後輩ですが尊敬できる選手」と中村憲剛選手について言及。来季から鹿島アントラーズで指揮を取ることも発表され、この日がフロンターレの一員としては一区切りとなる指揮官は「今日は“憲剛の日”だから 憲剛取り上げてほしい」としつつも、「一緒にプレーできてよかった。本当に心残りがあるとすれば、崩しを成功させたかったということくらい(笑)」と、感慨深げに語った。
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