劇的勝利もキャプテンが涙した理由
同点に追いつかれた流経大柏高は、二人のキャプテンを中心に流れを取り戻した。
センターバックでコンビを組む佐藤とDF奈須琉世(なす・りゅうせい、3年-柏レイソルA.A.TOR’82)はW主将として、ここまで赤の名門を支えてきた。
佐藤は「(主将が)二人というのはいままでにありませんが、奈須と俺は本当に仲がいいんです。キャプテンが二人いることで相談もしやすいですし、自分の肩の荷が下ります。
(奈須は)頼れる存在で、男らしい。(千葉県予選)決勝前の前日ミーティングでも『苦しくなったら俺を見ろ』と言っていて、そのまま有言実行の2得点を決めました。隣でプレーしていて本当に頼もしい存在ですし、かっこいいと思います」と背番号4の相棒とともに、後方から仲間をサポートし続けた。
すると後半36分に奈須がロングパスを前線に送り、攻撃のスイッチを入れた。相手DFに弾かれたこぼれ球をFW山野春太(しゅんた、3年-tfaジュニアユース)が頭でゴール前にボールを落とすと、FW粕谷(かすや)悠(ゆう、3年-AZ'86東京青梅)が右足ボレーシュートをゴール左側に突き刺して、流経大柏高が2-1と勝ち越した。
赤のイレブンは試合終了のホイッスルが鳴るまで、集中力を切らさなかった。佐藤を中心に声を出し続けたディフェンス陣は、大津高の攻撃をシャットアウト。試合はそのまま2-1で流経大柏高が熱戦を制し、上田西高(長野県代表)が待つ準々決勝へと駒を進めた。
「前線が得点を取ってくれて、『本当にありがとう』という気持ちでした。『チームに救われた』という思いで涙が出てしまいました」と背番号5は目を赤くした理由を明かした。そしてすぐさま力強い声で次戦への意気込みを口にした。
「きょう勝てば殻が3個割れるとエノさん(榎本監督)から言われていたので、流経はまた強くなったと思います。でもクールダウンしながら、『次が大事だ』、『次勝たないと意味がない』とも話していました。このような試合をした次の試合で負けているところをよく観ますが、気の緩みは絶対にありません」
高校サッカー引退はまだ先の話だ。佐藤は2007年度大会以来の選手権制覇に燃える赤きイレブンを、必ず国立競技場へ連れていく。
(取材・文・写真 浅野凜太郎)