「代表戦」。一流の人間が真剣勝負する場。

試合後、撮影した写真を提供先に送る作業を終え、カメラマン仲間の運転する車に乗り合わせて市内中心部まで戻る。人によるとは思うが、私は1試合90分撮ると、そのあと猛烈に疲れて眠気に襲われる。これをピッチ上の選手たちに聞くと、たいてい試合後はアドレナリンが出て、疲れているはずなのに深夜まで寝られないらしい。フォトグラファーの私はどうやら逆のようだ。

車内で猛烈な睡魔と闘いながら、乗り合わせているジュルナルのトップカメラマン相手に「初めての代表戦で全然うまく撮れなかった」とぼやく私。「そういつだって上手く撮れるもんじゃないさ、それに美しく撮れないのは被写体側の問題だ」と慰められる。

そんなこと言っても被写体は世界最高レベルなんだから、美しく撮れないのは圧倒的に私の側の問題に決まってるじゃないかと、車窓に流れる街の光をぼんやり眺めながら心の中でつぶやく。

フィリップ・コスティッチ(右)とストラヒニャ・パヴロヴィッチ(左)
ストラヒニャ・エラコヴィッチ。レッドスターから招集されている選手だ
MFサシャ・ルキッチ(Saša Lukić)。プレミアリーグのフラムFCに所属している

ちなみに彼が使うカメラ機材は20年落ちの中古レンズで、私の機材レベルとそう変わらない。ということは機材の問題でもない。付け加えておくと、スタジアムで私は基本的に全てぐだぐだのセルビア語でコミュニケーションをとっているので、ここでの会話内容はあくまでもこんな感じのことを言っていた、という程度の話だが。

翌朝、ジュルナルの1面トップを大きく飾ったのは、彼が(メインスタンド側ではなく)バックスタンド側で撮ったタディッチの1点目だった。

試合後、ピッチを後にするピクシー。隣は喜熨斗勝史コーチ

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代表戦とは、一流の人間がそれぞれの立場で真剣勝負をする場なのだ。闘いはピッチの中だけではない。選手はもちろん、その場にいる全ての人間が世界の頂点を目指して闘っている。まだまだだ。果てなき闘いは続く。

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