▼広告出稿だけでは終わらない、航空会社の新たな取り組み

ここではいくつか注目の事例を紹介したいと思います。

まずはトルコ航空。トルコ航空は上の図で示したように、2010年よりマンチェスター・ユナイテッドとスポンサー契約を結んでいますが、そのCMが非常におもしろいです。

「Globally Yours」という企業スローガン通り、国際色豊かな選手たちがそれぞれの持ち味を出して物語を演出しています。あのボビー・チャールトンに向かってシュートをぶっ放すのがルーニーというのも、いかにもそれっぽくて笑えますね。

そして、トルコ航空が制作した映像の中でもとりわけ話題になったのがコレです。

なんと、離陸前に機内で実際に流れる「安全ビデオ」にユナイテッドの選手たちが登場しているのです!

ここでも選手たちが自身のキャラクターを活かし、コミカルかつ分かりやすく操作説明をしています。つまり、これまでなかなか自分事として捉えてもらえなかった安全ビデオを、一つのコンテンツとして価値を転換させたわけです。 この事例は、サッカーメディア界だけではなく、PR業界や航空業界からも注目を浴びた例となりました。こうすれば、難しいことが苦手な子供でも楽しく視聴することができるし、大人の乗客もしっかり自分事として捉えることができますよね。そしてこれは、世界中で愛されているサッカーというスポーツだからこそ意味をもってくるものだと思います。

また、今夏にパク・チソンを獲得して話題となったQPRにも航空会社との興味深い関係がありました。

QPRのオーナーであるトニー・フェルナンデス氏が、QPRのスポンサーであるエア・アジアの代表でもあることは上述しましたが、なんとエア・アジアは今年の夏から、グループ会社全体での韓国線の増便や新路線の就航を決定しています。ちなみにエア・アジアは、マレーシアを拠点に主に東南アジア便を扱うLCCの会社です。そんな会社が東南アジアで爆発的な人気を博すプレミアリーグに目を付けたのも、当然といえば当然のことかもしれませんね。

確かにこれだけでは、パクの獲得によってエア・アジアの増便が決まったのか、それともエア・アジアの顧客創出の一環でQPRがパクを獲得したのか、トニー・フェルナンデスのプライオリティは分かりません。しかし彼の中で、新たなマーケットを開拓する手段として、航空事業とサッカーが結びついていたことは明らかではないでしょうか。

そういえば、今夏QPRからは獲得候補としてキ・ソンヨンやパク・チュヨンといった有力韓国人選手の名前が多く挙がっていました。このことからも、彼の中で韓国に対して市場としての大きな魅力を感じていたことが予想でき、そして「韓国」というパイを奪うために、航空とサッカーの両事業が相乗効果を果たしたと言えるはずです。