4年越しの夢を、フットボーラーが持ち寄る場所。W杯というのはサッカー選手にとって特別な舞台だ。国の威信を背負い、ぶつかり合う狂乱の宴は多くのドラマを生み出す。
コートジボワール。日本が初戦で対することになったアフリカの雄も、チェルシーの伝説ディディエ・ドログバや今季大爆発したヤヤ・トゥーレ、サロモン・カルーといった黄金世代にとって有終の美を飾ることになるであろう大会に勿論燃えていた。本コラムでは、イタリア人指揮官アルベルト・ザッケローニの戦術的失敗と、その選択に至るまでの彼の苦悩や理想について紐解いていこうと思う。
ヤヤ・トゥーレへの過剰な警戒と、ザッケローニが描いた絵
日本のメディアに何度となく報じられていたのは、ザッケローニが中盤でコートジボワールを牽引するヤヤ・トゥーレを警戒して戦術を練っているという事実だ。実際選手たちのコメントを見ても、遠藤が「1番は彼の自由を奪うこと。得点能力が高いので、全体をコンパクトにして2人で挟み込みたい」と語っているように中盤でのプレスで自由を奪おうとしていた事が解るだろう。そういった事から、日本代表はどちらかというと守備時は3センターを意識したような布陣を採用している。
本田と大迫が2枚でDFラインにプレスをかけ、香川と岡崎はどちらかというとセンターハーフのように守備時には中央をカバーするポジションを取る。とにかくヤヤ・トゥーレの持つスペースを狭めてしまうことに集中する形だったのである。イメージとしてはヤヤのところでボールを奪い取り、前線の2人に当てて速攻を狙う事を想定していたのだろう。
更に山口を横並びというよりも若干高い位置に置くことによって、ティオテやDFラインへのプレッシャーにも行けるようにしておいた。ミスが多いとされていたコートジボワールのDFラインがミスをすれば、一気に山口を前線の守備に動員出来る。また、速攻を潰すために山口を使っていきたかったという面もあるのだろう。実際試合でも、山口が敵陣でセカンドボールを拾い、相手の速攻を防ぐ場面は何度かあった。中盤の運動量は練習試合などで通用していたことから、「チャンスがあれば山口・岡崎・香川の3人で機を見てプレッシングを仕掛け、守備からの仕掛けで主導権を握って行く」という形をザッケローニは理想としていたはずだ。