▼ 代表チームにブラジル人選手が“激増"していた…
2010年スズキカップの予選で東ティモールは3戦全敗、15失点という悲惨な結果だった( 当時のマッチレポートが過去記事にあります)。ポルトガルの文化圏らしく足元が上手い選手はいるものの、個人能力や守備力に大きな問題を抱えていた。
しかし、2012年には前述の通りカンボジアを相手に大量5得点、実績のあるラオス相手にも勝利を収めるなど格段の成長を見せる。 そこで大活躍を見せたのがエースストライカーのムリーロという選手で、実は彼もブラジル生まれブラジル育ちの選手だったのだ。
【背番号19がムリーロ】
ただ、彼のデータを調べてみれば、キリノと同じように東ティモールとの繋がりが全くない。
ムリーロはブラジル生まれでバイーアユースの出身だ。プロとしてはインドネシア、バーレーン、ミャンマーでプレーし、現在はサウジアラビアのアル・イティファクに所属している。
2012年大会の代表チームにはその他にも5名のブラジル出身選手がおり、オーストラリアやポルトガルも含めれば9人がインドネシア、あるいは東ティモール以外で生を受けている。かつ、ほとんどが東ティモールでのプレー経験はないか、あるいはわずかに所属しただけである。
その彼らが東ティモールの代表チームでプレーすることが許された理由や背景については、これといった情報は見当たらなかった。どこかに先祖がいるのか、協会がチームの強化に積極的であり何かしらの施策に出ているのだろう。いずれにしても、キリノの国籍取得は東ティモールにとって珍しいケースではない。
ちなみに、現在東ティモールのU-23代表を率いてアジア大会に出場しているのは、かつてジュビロ磐田や清水エスパルスでプレーした古賀琢磨監督である。現在のU-23代表でいえば、おそらくブラジル人は3人だろう。
▼ 10月12日に予選が開幕するスズキカップへの期待
と、ここまで書いて(筆者が)気になるのは、10月12日に開幕する2014年度スズキカップ予選である。
そもそもだが、東ティモール代表は非常に限られた試合しか行わない。予算の問題か、スズキカップ予選が実に2年ぶりの国際試合となるのだが、今回はどんなメンバーでやってくるというのか?
――もしかしたらキリノも?
と胸を躍らせてみたものの、キリノはかつてブラジルU-20代表として2005年の南米ユース、ワールドユースに出場した経験があるので、『まあ、おそらく無理だろう』という話になるわけで、残念ではあるが。
かつて浦和レッズなどでプレーしたエメルソンがカタール国籍を取得し代表入りしたことで話題となったが、この際にも『ブラジルU-20代表でプレーしていたときにカタール国籍を所有していない』ということが(一つの)理由となって認められなかった。この例を考えれば、東ティモールの独立以降にブラジルU-20代表としてプレーしたキリノが認められる可能性は高くはない。
とはいえ、この謎のチームが見られるのは上記のように実に2年ぶりであり、スズキカップではその貴重なお姿を拝見できる。
本選には三浦俊也監督率いるベトナムも出場するので、日本とも縁が深い大会だ。おそらく今年もYoutubeの公式チャンネルで全ての試合が配信されるので、Qoly読者の方も是非楽しみにしていただきたい。
【リンク】AFFスズキカップ2014公式サイト