近年、スター選手たちが続々と挑戦を表明しているあるリーグがある。それが、「インディアン・スーパーリーグ」である。

インドといえば、サッカーが盛んだというイメージはあまりない。

代表チームも最新のFIFAランキングでは150位と低く、2004年以来日本代表とは4試合を戦っているが、日本は計20得点を奪って全勝している(しかも失点0)。インド出身のサッカー選手も、そう知られてはいないはずだ。

しかし、そんなインドに今世界的スター選手が挑戦の意思を示している。昨日、元イタリア代表アレッサンドロ・デル・ピエロも参戦することが決まり、これまでにもダビド・トレゼゲやロベール・ピレスフレードリク・ユングベリ(現役復帰という形になる)、ジョアン・カプテビラなどもすでに参戦が決定している。

「なんで今インドなのだろう?」―。そう思ったサッカーファンも決して少なくないはずだ。

そこで今回は、4年前から着々と(遅々と?)進んできたこの大型プロジェクトについてご紹介することにしよう。あまりに規模が大きいため全てを説明することはできないが、簡単にその概要に迫ってみたい。

■理念

そもそもの話だが、この「インディアン・スーパーリーグ」とは国内リーグとは全くの別物である。インドには1部リーグである「Iリーグ」が別に存在している。

ざっくりと言えば 『オールスター戦をリーグで、かつビジネスでやってしまおう』という話だ。インドサッカー界をあげての一大プロジェクトであるのだが、このインディアン・スーパーリーグにはある参考事例がある。

それが、インドで最も成功を収めているスポーツ・リーグ、クリケットだ。

人口12億人にもおよぶインドではクリケットが多くの観衆を集め、スター選手の収入も莫大なものとなっている。インドサッカー協会がアメリカのIMGグループと契約し、クリケットとMLSを参考に2010年に計画したのが前身の「インディアン・プレミアリーグ」。何度かの延期を経て2013年に計画が実行に移された。

なお、このインディアン・スーパーリーグ、冠スポンサーはかつて日本の本田技研と合弁企業として設立されたヒーロー・モーターコープが務めることが決定している。ちなみに、Iリーグ側とは日程の問題で非常に揉めた。

■形式

8つの都市が開催地に決まり、フランチャイズ権はオークション方式で決定された。

そのうち、コルカタ(都市名)はリーガ・エスパニョーラのアトレティコ・マドリーが、チェンナイ(都市名)はインテルが、プネ(都市名)はフィオレンティーナがそれぞれビジネスマンのグループとともに落札している。これは非常に興味深い例だと言えよう。

また、フランチャイズ権を落札したビジネスマンには多くのクリケットのスター選手や俳優が含まれており、スポーツ界や芸能界の間での連携も深いことが窺える。

■開催期間

8チームがリーグを戦い、10月12日に開幕し12月20日に閉幕する。超ド短期なリーグ戦だ。

ただし細かいスケジュールは現在検討中であり、公表されていない。開幕まであと45日ほどなのだが無事開催されるか少し気になるところだ。

(※9/3 正式なスケジュールが発表となり、10月12日から12月22日までの間、およそ1日に1試合が行われるというリーグとしては非常に珍しい日程となった。休息日はあるが1日に2試合行われることは一度もない)

■選手について

ここがこのリーグの最も特殊なところなのだが、各チームは必ず、外国人スター選手である「マーキー・プレイヤー」を1人獲得しなければならない。リーグの制約にこうした指定があるのだ。

そのほか、外国人選手は当初最大10名、最低7名を獲得する必要があり、そのうち2名はクラブと直接契約でき、残りはリーグが契約した選手をドラフトで獲得。8月21日に49名が8クラブに分配された。

なお、国内の選手は全てリーグ組織と契約する形。84選手が登録され、7月22日と23日に行われたドラフトで8チームに分配されている。

世界的スター選手が相次いでインドに参戦していた理由は、このマーキー・プレイヤー制度および3ヶ月間というきわめて短いリーグ期間である程度の収入を得られることにあったのだ。

なお、ロベール・ピレスやフレードリク・ユングベリはインディアン・スーパーリーグへの参戦自体は決定しているが、どのチームに所属するかはまだ決まっていない。このあたりも実にユニークであるというか適当であるというか…。