筆者が現在留学生活を送っているスコットランドの地には、「世界で唯一」のクラブが2つある。

1つは、Queen of the South Football Club(クイーン・オブ・ザ・サウス・フットボール・クラブ)。このクラブは、「世界で唯一」、「聖書の中で言及がある」クラブだ。あくまで、こちらは聖書に登場するキャラクターの1人である「Queen of the South」、とクラブ名を掛けた小粋なスコティッシュ・ジョークなのだが。

一方、もう1つの「世界で唯一」のクラブは、スコットランドのフットボールを形作ってきた歴史的なクラブだ。スコットランドのフットボール史を語る上で、このクラブだけは外す訳にはいかない。

そのクラブの名は、Queen's Park Football Club(クイーンズ・パーク・フットボール・クラブ)。

イングランドのQPR、Queens Park Rangers(クイーンズ・パーク・レンジャーズ)と非常に似た名前を持つこのクラブは、スコットランドのフットボール狂達にとっては特別なクラブだ。

中村俊輔がマンチェスター・ユナイテッドを相手にFKを流し込み、生きる伝説となったセルティックFC、そして彼らの宿敵として知られるレンジャーズFC。この2つのクラブが日本では有名だが、彼らによって支配されているスコットランド・フットボールの根幹には、実はQueen's Park Football Clubがある。

"Ludere Causa Ludendi"

クラブエンブレムにも掲げられた、彼らのスローガンであるこのラテン語の意味は、「フットボールをプレーするために、プレーする」というものだ。

まるで禅問答のようで、哲学的な印象すら受けるこの言葉。このスローガンは、一体何を意味するのだろうか?

その答えを知るためには、話を進めていく必要がありそうだ。

では、皆様をスコットランド・フットボールの旅へとご案内しよう。タイムマシンに乗り込んで、時間旅行に向かうような気分で読んでいただけると幸いだ。

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