このようにチェルシーも、ヴェッラーティの守備を利用した攻撃を何度か繰り出したものの、数としては前半で3回に満たなかった。そう考えると、PSGは彼の守備において大きなアドバンテージを得たと言えるだろう。後半は、マテュイディが彼の役割を肩代わりするように前に出て行ったことで、体力的な負担も軽減出来たということにも触れる必要がありそうだ。

時には相手を迎撃し、時にはコースを潰すことで相手の攻撃をコントロールする「緩急」によって、チェルシーは全体を押し上げながら、チームとして攻めるタイミングを失った。

攻撃において、エディンソン・カバーニとズラタン・イブラヒモビッチという2人のストライカーを擁するPSGは更にチェルシーのDFラインを引き下げ、相乗効果的に全体で攻撃を仕掛ける事を封じた。彼らが2人のCBと駆け引きを繰り返すことによって、「攻撃を仕掛けすぎるのは不味い」という意識が働いたのであろう。特に左ウイングに配置されながら、ラインの裏へのランを繰り返したカバーニの存在は、チェルシー守備陣を牽制するには十分だった。

勿論アウェイということもあり、ジョゼ・モウリーニョが比較的慎重にゲームを進めようとしたことは予測できるものの、ここまで攻撃を抑えられるというのは予想外だったのではないだろうか。実際DFがセットプレーから3人絡む、という幸運な形で先制したものの、後半はクルトワの好セーブが無ければ厳しい状況にまで追い込まれている。

PSGは試合全体を守備によってコントロールし、今季プレミアで何度となくチェルシーが見せている「全体を押し上げて距離感を狭めた上での、セスクからの攻撃」を無効化した。そういった意味で、この中盤での駆け引きは興味深いものだった。PSG指揮官ローラン・ブランが仕掛けた「前半でのヴェッラーティの緩急をつけた守備、そして後半はマテュイディに仕事を任せるという役割交代での緩急」によって、チェルシーは混乱し、本来の力を発揮しきれなかったのだから。

他にもPSGが見せたサイドでの複数枚を絡めた仕掛け、など興味深い点は幾つかあったが、最も試合全体に関わった点というとヴェッラーティ、そしてマテュイディの中盤守備だったと言えるだろう。何度か本職MFでないダビド・ルイスがポジショニングミスをすることがあったものの、それを補って余りあるほどに彼らは中盤で効果的に相手の攻撃をコントロールして見せた。

試合を録画している方は、マルコ・ヴェッラーティの首振りに是非注目して欲しい。自分の裏へ走り込む相手アタッカーを常に把握するために、彼は徹底して首振りを怠らず、相手の攻撃を封じ込めてしまった。こうしたスペースの把握も、世界レベルの選手だからこその気遣いと言えるかもしれない。

名将カルロ・アンチェロッティの指導を受け、イタリア代表でも活躍した新鋭は、細かな守備技術を着実に高めつつある。

勿論、チェルシーのホームであるスタンフォード・ブリッジでは、世界一の指揮官とも称されるジョゼ・モウリーニョの反撃が期待される。攻撃力でもプレミアを席巻する「攻めるチェルシー」。プレミア屈指のドリブラーであるアザール、バルセロナ帰りの天才セスク、彼らが率いる攻撃陣がこのまま空回りに終わるとは思えない。

しかし、ローラン・ブランも当然勝ち抜けを狙って策を練っているはずだ。多額の投資を続ける上層部を納得させるためには、当然国内リーグだけの結果では物足りない。

2ndレグからも、目が離せなくなりそうだ。

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