まず、UEFAにおけるBライセンスの練習メニューの1つ、「チームとしての守備」について見ていこう。

コミュニケーションの重要性については、UEFAの授業においても何度か言及されている。例えば、「守備が組織として動くために、コーチはFW、MF、DF、GKという全てのポジションの選手にコミュニケーションをしっかり取っていく事を求めなければならない」というものがある。

その中でも特に、「MFとFW間のコミュニケーション」、「FW2人のコミュニケーション」が強調されて触れられていることが着目すべき点の1つだろう。「プレスの開始点となる前線でのミスを減らすために、コミュニケーションを重視している」という部分は、日本代表の試合とは真逆に見える。

どちらかと言えば日本代表では、後ろの選手はコミュニケーションを積極的に取り合おうとしているものの、前線は守備時に個々がバラバラに動いてしまうことが多い。反対にこのUEFAの授業では、「コーチが守備において、細かい個人的な動きを最初に指導すべきはFW」となっている。この部分も、プレッシングの指導において1つ言及すべき部分だろう。

例えばこの場面、相手DFが右サイドからパスを繋ぎ、黄色チームから見て左サイドでボールを持った際、中央にいたFWがボールサイドへと流れることになる。そして、左サイドにいたFWの1人が全体のスライドによって生まれたスペースへと下がることになる。これは、ゾーンDF的な中盤と前線の動きを練習するメニューなのだが、常に前線の選手はコミュニケーションを取り合わなければならない。

1枚目の画像には、中盤が「俺が行こう」と声を出しており、FWが「俺がMFに下がる」と声を出していることになっているが、FWが下がってこなければ勿論DFやMFから、FWに「下がってこい」という指示を出す必要がある。また、細かなポジションのズレなども、後ろから見た方が解りやすいことから、後ろの選手が指示を出すことによって修正していく事を求められる。

また、コミュニケーションを基盤としたアプローチをする上で、人数を減らすことも重要だ。この練習では、8対8にすることでFW、MF、DFという3つのライン間でコミュニケーションを取りやすい状態を作り出しており、コーチとしても選手達のコミュニケーションを確認しやすくなっている。狭いピッチになれば、声が通りやすいというメリットもあるだろう。

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