今回の試合に先立ち、イングランド代表は国歌斉唱の際にフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」の歌詞をオーロラビジョンに表示することを発表していた。

テロの恐怖に晒されているフランス国民を励まそうと、イングランドファンに斉唱を訴えかけたのだ。

そしてこの試合では、英国国歌「ゴッド・セーブ・ザ・クイーン」がフランス国歌の前に演奏された。

本来こうしたAマッチではアウェイチームの国歌が先に演奏されるものであり、これは異例中の異例の措置である。

国歌斉唱の際にはベンチメンバーも一列に並び、チーム全員で整列した。こうしたことも、イングランド側から提案されたものだったに違いない。

そしてその時はやって来た。

「ゴッド・セーブ・ザ・クイーン」の斉唱が終わると、“サッカーの聖地”は文字通り「一つ」になった。

オーロラビジョンにはやはりフランス国歌の歌詞が表示されており、演奏に導かれ多くの人が国籍の壁を超えてこの歌を口ずさむ。

さらにはゴール裏でフランス国旗のコレオグラフィーも作られており、スタジアム全体がフランスへの連帯の意思を示した。

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