横浜ゴムの現状と課題
では、簡単に横浜ゴム株式会社の状況を説明しましょう。
同社は1917年創業、現在は東京の西新橋に本社ビル、平塚市に中核研究拠点を持ち、海外を含めて積極的な事業展開をしています。2014年度の連結決算データではグループ合計で従業員2万1441人、売上高6252億円・営業利益591億円・純利益405億円はいずれも3年連続で過去最高となりました。
部門別ではタイヤ事業が4976億円と約8割を占め、コンベアベルト・ゴム板・各種ホース・建築用各種ゴム資材・接着剤など非常に幅広い工業品事業部門が1015億円、航空部品やゴルフ事業を含む「その他」が262億円と紹介されています。
しかし、横浜ゴムの経営には大きな課題も残っています。ゴム業界では2014年度売上高が3兆6738億円と世界一のブリヂストンが独走し、横浜ゴムは6252億円で住友ゴム工業(8376億円)に続く3位です(4位で3938億円の東洋ゴム工業を含めた4社でほぼ全ての日本のタイヤを生産)。
その地域別内訳を見ると、<図1>のようになります。
<図1>日本の自動車タイヤメーカー4社の2014年度・地域別売上比率
※横浜ゴムの「北米」はアメリカのみでの売上高。ブリヂストンの「北米」は、中南米を含む「米州」での売上高。ブリヂストンの「その他」には「欧州」11.8%を含む。住友ゴムの「その他」には「アジア」19.7%を含む。(出典:各社2014年決算発表より作成)
他社と比較すると、横浜ゴムは日本市場の比率が比較的高く、ユーザーの根強い支持を得ているのが分かります。また、巨大市場の北米(アメリカ)でも比較的高いシェアを維持しています(ブリヂストンの高率は以前の巨大買収によるもの)。一方、各国の伝統メーカーが強い「欧州」、今や世界一の自動車市場国になった「中国」、それに今後のモータリゼーションが期待される「東南アジア」などが含まれている「その他」の構成比はブリヂストンや住友ゴム工業よりも低い状況です。日本市場の急速な拡大が期待しづらい中、この地域での販売拡大の重要性は今後更に高まるでしょう。
横浜ゴムは2006年5月、南雲忠信社長(現会長)が中期経営計画「GD100」を発表しました。これは創業100周年になる2017年度に「売上高1兆円、営業利益1000億円、営業利益率10%」を達成するというもので、2005年度実績から売上を2.2倍、利益を4.7倍にする、非常に野心的なプランでした。その後、2008年のリーマンショックの影響など外部環境の変化もあり、計画を修正しました。
そして2015年2月13日、横浜ゴムは2014年度決算発表と同時に中期経営計画「GD100」に向けた最終段階の「フェーズⅣ」のスタートを宣言しました。これは2017年度に売上高7700億円(対2014年度で23.1%増)、営業利益800億円(同35.4%増)、営業利益率10.4%を実現するものです。より現実的な数値に修正した以上、「成長力の結集 ~YOKOHAMAの可能性を結集して、次の100年を切り拓く~」というテーマの下で、必達ノルマとしての意味はさらに重くなったでしょう。
その中で、同年2月27日(現地時間では26日)、横浜ゴムとチェルシーFCとの間で5年間のスポンサー契約が発表され、南雲会長と桂川秀人常務(現専務)、そしてチェルシーのジョゼ・モウリーニョ監督とジョン・テリー主将が写ったスタンフォードブリッジでの写真が公開されました。
……いつもながら、長い前置きですいません(苦笑)。
お待たせしました、それでは、横浜ゴム広報部グループリーダーの田中誠氏と、同社タイヤ企画部でチェルシータスクのリーダーを務めている関口和義氏のお話をお届けします。この取材は11月18日、東京・新橋の同社本社「浜ゴムビル」で、Qoly編集部の方が同席の上で行いました。