鍵を握るのは「熟練の三銃士」

前述の通り、吉田監督はマイナーチェンジを施した。2トップへの布陣変更とそれに伴う中盤の再編だ。

得点力アップを目的とした変革だが、吉田スタイルの鍵を握るのが3センターハーフだ。兵働、小椋、田中という熟練のベテランが違った持ち味を出しており、大変興味をそそられる。

アンカーを務めるのは、正確な左足が自慢の兵働。この背番号15が攻守の中心だ。

昨季は水戸ホーリーホックで攻撃のタクトを振った兵働だが、甲府ではレジスタの位置ですべてを司る。相手DFの背後に落とすロングパス、大胆なサイドチェンジ、前線への鋭い縦パス。シチュエーションによって様々なパスを自在に使い分けていく。

セットプレーのキッカーも任されるその仕事ぶりは、アンドレア・ピルロを彷彿とさせる。レフティーであることを踏まえれば、フランチェスコ・ローディに喩えた方が良いだろうか。

兵働をサポートするのが、豊富な運動量を誇る小椋と田中だ。

前者はボールホルダーへの激しいチェックとボール奪取で相手のアタックを分断していく。第12節の広島戦では、豪快なミドルシュートを叩き込んだように、意外性のある男でもある。

サイドやフォワードもこなす後者はまさにダイナモ。どこで起用されても一定以上のパフォーマンスを保証するサッカーIQの高さが魅力だ。

兵働を含めた3人に共通するのが、経験に裏打ちされたプレーである。局面ごとにどのようなプレーが最適なのか、どうすれば相手が嫌がるのかを熟知している。攻守をつなぐ「熟練の三銃士」がチームを陰ながら支えているのだ。

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