実際に菅原GM体制では今季新人を多く獲得した。正ゴールキーパーの牲川歩見をはじめ多くの若手選手が起用されているが、一方で若手がtonan前橋に期限付き移籍でレンタルへ出されている。

例えば、8月18日のJリーグでの移籍情報はこうだ。

MF佐藤遵樹、MF志村駿太、MF早坂龍之介(tonan前橋へ移籍)
DF藤原雅斗、DF中村俊貴(tonan前橋へ期限付き移籍)
GKハン・ホドン(tonan前橋へ移籍)

菅原宏GMは「選手の強化・育成において、公式戦における実戦経験が最も意義のある事と考え、昨年に引き続き今回の移籍を決定いたしました。関東リーグ2部公式戦で経験を積み、ザスパの戦力として復帰させる予定です」と語っており、tonan前橋で経験を積み成長したら復帰させることをコメントしている。

期限付き移籍をしながらも「週に何回かはザスパの練習に参加する(菅原宏GM談)」というのが生み出された手法だ。

しかし、現状では上手くいっていないというのが正直なところだ。2016年3月にザスパからtonan前橋・tonan前橋サテライトに期限付き代表へ5選手が移籍した。

朴昇利、中村俊貴、福島遼、大岩亮太、オ・ハンビンの5選手である。彼らの2017年所属は以下となっている。

朴昇利(ザスパクサツ群馬、プロ契約へとステップアップ)
中村俊貴(tonan前橋へ再び期限付き移籍)
福島遼(引退)
大岩亮太(大学進学)
オ・ハンビン(無所属)

まだ1年という期間ではあるが、今のところ昨年tonanでプレーした選手がザスパの主力へと成長するようなことはない。

また、同シーズンは2つの問題が起こった。

加入したばかりの八角大智が契約解除となったのだが、それがtonan前橋への移籍を断ったからではないかというものだ。八角は前にグルージャ盛岡へ移っている。

また、9月に一度はtonan前橋へ期限付き移籍が決まったと報道されたのち移籍が取り消しとなり登録抹消となったイム・チョンビンのケースがある。イムは昨シーズンを持ってザスパを退団しその後は無所属となっている。

今季の体制はザスパクサツ群馬(J2)、tonan前橋(関東2部)で、さらにザスパクサツ群馬チャレンジャーズ(群馬県1部)、tonan前橋サテライト(群馬県1部)とサテライトチームが加わるために実質4チームに影響力を持っていることになる。サテライト2チームは同じカテゴリだ。

ちなみにtonan前橋サテライトは2014年にトップチームを破り天皇杯に出場したことで話題となった。

しかし、上述のように決してうまくいっていない。今季のザスパクサツでは8月18日現在2名の選手しか前所属tonan前橋という選手はいない。

さて、ここで海外で同じようなケースがかつてあったことを紹介しよう。イタリアの有名なサッカークラブであるペルージャとウディネーゼの話である。

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