ドリブル序盤
こちらはネイマールが相対する選手を「抜き」にかかる直前のシーンだが、この時に見ておきたいのがレンヌDF陣のマーキングにある。
ネイマールの前にはドラクスラーとカバーニがいたが、この段階では、レンヌのDF陣は各々きっちりとマーキングができていることが画像からもわかるはずだ。
仮にここにボールが入ろうとも、DF陣からすると「すぐに対応できる距離感を保っていた」という感覚だっただろう。
ドリブル中盤
続いてはそれから数秒後。ドリブルで抜き去った後のシーンだ。
レンヌの右サイドバックがエンバッペのマークを捨て、ネイマールに対してプレスを掛けに行こうとしている瞬間である。
そして、ここで同時に注目したいのが、カバーニのエリアで、先ほどと比べてマーカーとの距離が開き始めていることがわかるはずだ。
理由は簡単。
このタイミングで右サイドバックがDFラインを飛び出してボールに行くと、センターバックの一枚はエンバッペのマークを受け継ぎ、もう一人のセンターバックも「その穴を埋めよう」とポジションをスライドさせるのが基本だ。
そうすると、必然的にポジションは中央寄りになり、センターバックの横で「膨らむ」動きを見せたカバーニとの距離も開くというわけだ。
さらにもう一つ。
カバーニのマークについていた選手の体の向きも見て欲しい。やや中央寄りで、なおかつ視線はネイマールに向けられていることがわかるだろう。
つまり、このDFはカバーニへの対応が難しい体制を強いられており、そしてそのように仕向けたのが何を隠そうネイマールである。上述の「相手を操るドリブル」だ。
ドリブル終盤
そしてこの「相手を操るドリブル」のフィニッシュがこのシーン。
最終的にネイマールは相手の左サイドバックまで吊り出して、カバーニにパスを出すのだが、最後の最後までDF陣はネイマールに翻弄されたことがよくわかる図だ。
ドラクスラーに対してマークを受け継いだセンターバックが近い距離を保っているのだが、カバーニに対してはさらに距離が開いてしまっている。
これはネイマールが取ったドリブルのコース取りと方向に秘密がある。ネイマールはやや左から中央に入るイメージでバイタルエリアに進入するコースを取ったのだが、このポジションに入ってこられると、相手DF陣はシュートコースを塞ぐわけにはいかない。
そのため、センターバックもカバーニには注意をしつつも、このようなポジションを取らざるを得ないのである。
そしてその結果、カバーニはトラップからシュートまで余裕を持って行える状況を手にしたのだ。
何もドリブルは「抜く」だけが仕事ではない。「操る」ことでもチャンスは生まれる。