明治安田生命J1リーグ第6節、横浜F・マリノス対川崎フロンターレの「神奈川ダービー」は、1-1のドロー決着となった。

「昨季までマリノスのエースナンバーを背負っていた齋藤学がフロンターレのユニフォームを初めて身に着ける試合」という観点でも注目が集まった一戦だが、両チーム共に攻撃面に特長があるため、試合内容自体も大変見応えがあるものであった。

とりわけ、アンジェ・ポステコグルー新監督の下、リーグ王者相手に自らのスタイルで真っ向勝負を挑んだマリノスの姿勢には惚れ惚した。

だが、その一方で、彼らが現在抱えている弱点が散見したのも事実。

それらは「ポステコ流」を志向する上では宿命とも言うべき課題とも言えるが、ここでは二回に分けて、その試合の中から抽出した代表的なシーンを取り上げて分析しこうと思う。

陥りやすい「ポジショナルプレー」の勘違い

今季のマリノスは、Jリーグでは数少ない「ポジショナルプレー」を志向するチームである。

「ポジショナルプレー」を突き詰めるとそれだけで話が終わってしまうので、このキーワードに耳慣れない方は、「ボールの位置など状況に応じて、適宜自分たちがどのようなポジションを取るべきかを考えるスタイル」とでも認識してもらえればけっこうだ。

そのため、「ポゼッションサッカー」とは全く別物であり、勘違いされやすいが、マリノスは決して「ボールを保持すること」のみに主眼を置いているわけではない。

DFラインを極端なまでに押し上げ、それによって空いた広大なスペースはゴールキーパーがポジションを上げてカバー。サイドバックは中央に絞りながらボランチのようにゲームの組み立てに参加。前線もボールの置き所に応じてポジションを微修正を行っているが、これらは「ボールを支配する時間を長くする」のではなく、「攻守において自らがゲームを支配する」ためのものであり、似て非なるものだ。