強風で“空中”を使えずに“地上戦”で完敗
この日はリーグカップの第2節。1部昇格の懸かるリーグ戦とは違い、控えメンバーや怪我から復帰した選手のコンディション確認、または新人選手を起用して選手層の拡充に努めるチームもある。
シーガルズがホームに迎えたスフィーダ世田谷FCは、昨季リーグ11ゴールを挙げたクラブ待望の下部組織出身のエースFW長崎茜がベンチスタートとなるなど、2週間前のリーグ戦から先発メンバーを7人変更していた。
逆にシーガルズは1週間前のちふれ戦から2人の変更にとどめたものの、開幕から大滝との2トップで良い連携を見せていたFW高橋美夕紀がベンチスタートとなった。
この試合のポイントは度肝を抜かれそうな強風だった。コイントスで勝利したスフィーダは迷いなく風上を選択。エンドチェンジしてキックオフを迎えた。
スフィーダの川邉健一監督は「女子選手の特徴を活かすサッカーをする」と常々口にしており、攻守においてコンパクトな距離間を保ってプレーする。
本来はもっと細かいパスを多用した攻撃が理想だろうが、この試合では強風のために「縦ポン」を有効活用できないシーガルズの機能不全を利用し、セカンドボールに対して数的有利な状況で構えて中盤を支配。ボールを回収してから3本以内のパスで鋭い攻撃を披露した。
12分、素早い攻守の切り替えから左サイドをドリブル突破したスフィーダのMF橘木友理恵のクロスを、FW山本菜桜美が左足で蹴り込み、アウェイのスフィーダが先制。
続く19分にも左サイドからの攻撃で崩し、最後はMF菅野永遠が追加点を決める。シュートをポストに当てながらも、リバウンドを自ら押し込んだ。その後も何度も速攻から決定機を量産していく。
シーガルズは2つの失点シーンを始め、スフィーダの左サイドからの攻撃に何度も崩された。今季は右サイドバックとしてシーズンのスタートを切っていた36歳のベテランMF山本絵美が、この日はボランチとしてプレーしていた影響があるかもしれない。
強風で戻されるためにロングボールを有効に使えないシーガルズ。ある意味では「全体が間延びすることでスペースを作って攻撃する」ことが強みであるため、前線で起点を作れないと攻守が分断されて苦しくなるのだ。
頼みのFW大滝も、この日は後半にバランスを崩して放ったシュート1本に終わった(上記写真)。
相手の密集した陣地を抜け出して局面局面の1対1の勝負に持ち込む。これで2週間前のハリマ戦は見事に勝利したが、今季からポゼッション志向のサッカーに取り組み始めたハリマとは違い、クラブ創設者でもある川邉監督が率いるスフィーダの“地上戦”は一歩先を行っていた。
後半はやや盛り返したが、スコアは動かずの0-2。印象としては「完敗」だった。
戦術コンセプトがシンプルなぶん、新加入選手の個々の能力は発揮しやすいかもしれないが、やや一本調子だ。1部昇格を目指すには対応力の面で課題が出た試合だった。