――つまり、あのシーンを切り出して「強い」と評価するのは少々違うということですね。
そうですね。
あのゴールを除くと、ペナルティエリア内に侵入して決定機を迎えたのは、前半にショートカウンターから左サイドバックのサバリがニアングにスルーパスを送り、それをニアングが左足でシュートを放ったシーンぐらいでした。
右サイドからのクロスボールにディウフが飛び込むシーンは迫力がありましたが、ゴールの匂いを感じるものではありませんでしたし。
そのため、個人的な感覚としては「得点力不足」という件については、解決したとは思っていません。
ただ、「得点力不足」という表現は抽象的ですので、「攻撃時におけるグループ戦術の乏しさ」、「遅攻時におけるイマジネーションの欠如」と具体的に言語化するのが適切でしょうか。
まず、彼らの攻撃ベースには「マネを活かす」という考えがあると思います。
マネがボールを受け取れば、皆は彼のパスを呼び込む動きを行う、マネのポジションによって皆がポジションを修正するというイメージを持っているチームです。ですが、その一方で、マネ経由を除くと「グループ戦術」は皆無です。
あるとすれば、中盤の選手がサイドでボールを持った時にサイドバックがサポートに動き、そこからのクロス。そして、クロスに対しては最低二人がゴールに飛び込み、ファーポストやセカンドラインにも人を置くという簡単な約束事ぐらいでしょうか。
「細かいパス交換と動き出しで切り崩す」、「片方に相手を寄せてサイドチェンジへの展開」、「FWが下りてきて空いたスペースにMFが飛び出す」という類の連動した攻めはありません。
そして、それが結果的にゴールの少なさに繋がっていた印象です。
ただ、ここで勘違いしてはならないのは、「個々でどうにかしてしまうレベル」の選手が揃っているので、もちろん「怖さ」は存在するという点です。マネはその代表格ですが、ニアングやサール、ポーランド戦では先発でなかったケイタも同様の力を持っています。
ですが、いずれの選手もどちらかと言えば「活かされる」タイプなので、コンビネーションでの崩しが発生しにくいチーム編成ではあります。
――先程指摘した「遅攻時におけるイマジネーションの欠如」については?
これは前述した問題と共通する部分もあるのですが、ここでも「グループ戦術の不足」が響いています。
遅攻時というのは、基本的に相手チームが守備ブロックを敷いた状態での攻略となるので、そこでは工夫が要ります。
シチュエーションによってその工夫の仕方はバラバラですが、いずれにせよ言えることは、「一人の力でどうにかする」という考えだけでは限界が訪れるケースがほとんどということです。
そこで、どこのチームも「誰かが守備ブロックの間に顔を出す」、「そのパスコースにボールを出す」、「ブロックがずれたところにまた誰かが顔を出す」ということを繰り返したりするのですが、セネガルにはそういう発想が見られません。
ポーランド戦では比較的攻められていましたが、その理由は、ポーランドが引く位置からボールを繋ぐチームであり、セネガルのカウンターとの相性が非常に良かったことが大きいでしょう。
実際、大会前に行われた格下ルクセンブルクとの試合では、終始自分たちがボールを持つ試合展開でしたが、スコアレスドローで終了。
また、その後に行われたクロアチアとの強化試合では、サールが一点を奪い1-2という試合結果でしたが、やはりここでも見せ場となったのはカウンターや個々のスピードを活かした単調な攻めでした。