――続いてセネガルの守備についてはどうでしょう?各メディアが「堅い」と口を揃えていますが。
「堅い」という表現が、守備のどの部分を指しているかにもよりますが、個人的には「堅い」という印象はないですね。
もちろん、ルーズボールを拾う強さ、タックルで確実に相手を仕留めるパワーなど、長所であるフィジカルコンタクトを武器にした守備は手ごわいです。その良さが一番活きているのが「ボランチのエリアに相手選手を引き込んでのゾーンプレス」ですね。
単体でもボールホルダーに圧をかけられる面子が「ここぞ」と見るや、複数でボールを取りに来るわけですから、想像するだけで恐ろしい…。
アリウ・シセ監督の下、「ボールホルダーに対して集団で潰す」という意識が各所で統一されている印象で、センターバックとボランチで挟む、ボランチとサイドで挟む、ボランチ同士で挟むという複数での守備は精度を増しました。
中央のエリアでボールを奪い、相手の守備ブロックが出来上がる前に、素早くサイドに人を走らせてパスを送る。周辺の選手もトップスピードで最前線に駆け上がり、一気にゴールまで持っていくスタイル。いわゆる「ショートカウンター」です。
そのため、日本から見ると、例えば、ハーフウェイライン付近(ミドルサード)でボランチが意図もなくパスを回すようなシーンは回避する必要があります。センターバックからの縦パスも同様に危険です。
繰り返しになりますが、「無理に繋ぐくらいなら思い切って相手サイドバックの周辺に放り込む」に徹底するほうが良いのではないかと見ています。
――この長所を逆手に取るというのは?
その考えは面白いですし、チームによってはそのような準備をしてセネガル挑むところはあるでしょう。
セネガルがボールを奪いにきやすいエリア(ボランチの前、サイドバックの前など)にあえて入り、彼らが食いついたところで空いたスペースに展開する方法ですね。
彼らは奪いに来るときは一気に前に出てくるので、その分、全体的にポジショニングがチグハグになりやすい。つまり、狙ってできるのであれば、「カウンター返し」のような格好になりますし、非常に効果的です。その上、セネガルはMFとDFラインの間にもスペースが空きやすいので、この隙をついてバイタルエリアを攻略するプランもありでしょう。
ただ、今の日本代表を見た時に、このような策を敷き、それを実施するようなイメージが湧かない。それよりも、意図のない横パスや可能性の低い縦パスをかっさらわれるマイナスイメージのほうが湧きやすい…という感想です。
――そこで余計ことは考えずに「相手サイドバックのところを攻める」ということでしょうか?
そうですね。日本のサイドの選手が、セネガルのサイドバックの裏を狙う、それが無理ならば大外に張ってボールを受けるイメージです。
セネガルの守備は基本的に中央を固めてブロックを敷くため、サイドバックの横のエリア(ペナルティエリアの両脇)が比較的空きやすいのも特徴です。
また、セネガルのサイドで起用されるプレーヤーは決して守備力が高くないですから、ちょっとした工夫でここから崩すことは可能だと見ています。
実は、意外と背後に出たボールに対して脆いです。
DFラインの裏を取られてのプルバック(マイナス気味のクロスボール)に対しては、中のポジションがずれやすく、マークもはがし気味です。さらに、両センターバックを越えるボール、ファーサイドに放り込まれるロングボールに対してはボールウォッチャーになりやすく、ポーランドもシンプルにサイドにボールを送る展開からチャンスを作っていました
ポーランド唯一のゴールも、ファーサイドへのロングボールをヘディングで入れたものでしたが、それも偶然ではないでしょう。