――本日はありがとうございます。

まずは、おそらく様々なところで話されていると思いますが、福島、その中でもいわき市にクラブの拠点を置いた理由を教えてください。

私は以前、Jリーグのセレッソ大阪と湘南ベルマーレでGMや社長を務めていました。そうした立場でリーグ全体を俯瞰したとき、今のJリーグは地域貢献やプロサッカーリーグと謳っている一方で、“勝利だけ”を目標にしている会社の活動が重視され、本来はもっと人がスポーツを通じて成長しなければいけないはずなのに、そこがずれ始めている。

そうした中で出会ったのが、株式会社ドームの安田秀一だったんです。いわきFCを運営するいわきスポーツクラブの親会社であるドームの会長を務める安田と私は同期。彼は法政大学のアメフト部出身で、昔から知っている関係でした。

ドームは『スポーツを通じて社会を豊かにする』という理念を掲げていて、今の欧米はこんな風になっていて、という話をしてくれました。私も感覚的には理解していたのですが彼はそれを言葉にしていて、「スポーツは慈善事業ではない」「スポーツで稼がなくてはいけない」など、結構強めなことを言われたんですが当たっていると感じる部分が少なくありませんでした。

サカつく×いわきFC 大倉智社長インタビュー

【大倉智(おおくら さとし)/1969年5月22日生まれ。早稲田大学から日立製作所へ入社し、その後プロとして柏レイソルやジュビロ磐田などでプレー。1998年に現役を引退した後、バルセロナのヨハン・クライフ大学でスポーツマネジメントを学び、2001年にセレッソ大阪のチーム統括ディレクターへ就任。2005年に移った湘南ベルマーレでは強化のトップから代表取締役社長まで務めた。2015年12月、株式会社いわきスポーツクラブの代表取締役兼総監督に就任】

彼らがいつも「スポーツの本質」と言うのは、健康や地域貢献もありますが、やはり大事なのは経済だと。誰もが分かっていながら、誰もそういうことを言わない。これまで定義されてこなかったことを彼らは定義していて、その通りだと思いました。

そして、「実はいわきに物流倉庫を作っている。震災復興の雇用創出や経済活性化。でもそれだけではつまらない。スポーツで地域に何かをしたい」といった視点から安田と色々な話をしていたところ、「サッカーチームを作ったらどうか?」という方向にどんどんなっていきました。

安田と出会った2013年頃、今のいわきFCパークがある土地に一度来てみたんです。元々「いわき電子」という会社の社屋があったので土地は広く、東日本大震災の後は広野町の仮役場が置かれていた歴史もある場所でした。

それで、いよいよ本当にサッカーチームを作ろうとなった時、ひとつ大事なこととして私が言ったのは、施設についてでした。Jクラブでも行政頼みになりがちなのですが、自由に使える施設があることが、やはりスポーツビジネスの原点です。

そこは嫌と言うほどベルマーレで感じていたので、それを安田へ伝えたところ、「よし、分かった」と言ってこのグラウンドやクラブハウスができ、後戻りができなくなりました(笑)。

サカつく×いわきFC 大倉智社長インタビュー

※3階建てのクラブハウス正面。デザインも非常にクールだ。

サカつく×いわきFC 大倉智社長インタビュー

※クラブハウスの裏にはよく整備された人工芝のグラウンド。奥に見えるグレーの建物がドームの物流倉庫で、クラブハウスも大きいがそれ以上に巨大。