取材を進めるごとに広く周知されていた厳格な指導者とのギャップに筆者は驚きを隠せなかった。ただ凱さんはプロ転向後の心情の変化に気づいていた。

「Jリーグの記者会見で笑顔気味で話していて、高校のときはそんな感じでインタビューを受けていた印象はなかった」と明かし、「違う一面を見ているように感じている人たちもいました。それだけで(いままでのイメージが)大分変わるんじゃないかなと。怖いだけだったら、他の人からしたら怖い人という認識が強くなるので。それなら好かれる監督になってくれた方がいいかな。愛着を持たれる監督が一番の理想です」

身近で見てきたからこそ、人生で一番尊敬する人物を問われれば父親と迷わず返答する。

凱さんは「ヴァンラーレ八戸さんがJ3に加入するまで、青森県はJリーグのチームがない県でした。それでも(地域の)子供たちは(青森山田の)プレミアリーグの試合を観に来てくれました。みんなタオルマフラーやユニフォームを買っていましたし、プロチームじゃないのに応援してくれる人がたくさんいました」

青森のサッカー界において、青森山田は高校以上の存在になっていた。

黒田監督が28年間かけて築き上げてきたものは成績やチームだけでなく、青森のサッカー少年たちの夢となっていた。

だからこそ凱さんは「どれだけ有名な人に会っても、一番尊敬できる人は親父以外いないと思っています」と口にした。

現在町田はJ2首位と好調をキープしている。「(町田には)J1昇格してほしいですし、やるからには一番を目指してほしいです。J1で活躍する(父の)姿が見たいです」とエールを送った。