カードゲームで学んだ勝負の本質

――オシムさんと仕事をして3年半で一番思い出深かったエピソードを教えてください。

いろんなことがありました。いっぱいありましたけど、僕とオシムさんの思い出、エピソードは2人でトランプをしたことです。

トランプといっても2組のトランプを合体させてすごい量でやるゲームがあるんですよ。世界的にはラミー(rummy)というゲームだと思うんですけど。日本の麻雀に似ていてすごく頭を使うゲームで、世界大会もあるぐらいのゲームなんですよね。それをオシムさんはちょっと時間ができたり、アウェイ試合前日の宿泊先ホテルでコーチや僕も含めてやるんですよ。

自分でいうのもなんですけど、僕はオシムさんの1番近くにいたので、そのゲームが結構強くなりました。最後の方はもうオシムさんと1対1で勝負することが何回もありました。

試合前日のホテル、移動の飛行機、新幹線でよく1対1の勝負をさせていただいたんです。オシムさんはそのゲームを結構大事にしていました。(ゲームは)すごく人間性も出るし、戦略も出るし、そのゲームをやったら相手のことが分かるみたいな。

オシムさんとの記者会見や練習、ミーティングでいろいろと学んだと思うんですけど、多分勝負の本質みたいなものは、そのトランプの勝負で学んだと僕は思っています。

ラミーの様子(イメージ写真)

――心理戦や戦い方などゲームを通じてオシムさんから学んだということでしょうか。

それもあります。たまにですけど、僕が勝つときがありました。あれだけすごい名将のオシムさんとイーブンな立場で勝負ができることなんて(ゲームでしか)ないじゃないですか。だから僕にとっては本当に幸せな時間だったんですよね。