イニエスタとの違い
ポゼッションの申し子であるイニエスタとマタは比較されがちだが、似て非なる選手と断言していい。確かに卓越したパス能力、相手を軽やかにかわすドリブル、類を見ない視野の広さなど共通点もあるが、まったくと言っていいほど異なる選手だ。
まずマタは対人守備能力も一定の評価がされている。トランジションが激しく切り替わるプレミアリーグのサッカーにおいて、アスリート能力の高さと肉体的な強度は必要不可欠だ。本職の守備型ミッドフィルダーほどではないが、マタも球際の守備やタックルなどをしっかりとこなしていた。
伊達に世界最高の強度を求められるプレミアリーグに11シーズンも在籍していたわけではない。この守備能力についてはイニエスタよりも優れている可能性が高い。マタも加齢による身体的な衰えはあるが、神戸の強度にはある程度順応することはできるだろう。
さらにプレースキックの威力や精度にも違いがある。イニエスタはプレースキックを務めることがあったが、ふんわりとした軌道のボールは相手のストーンがはじく場面が多かった。
一方でマタは様々な球種を蹴られるため、フリーキックでの得点やコーナーキックでのアシストも期待できる。そして利き足の違いもあるため(マタは左利き)、ボールの質も大きく変わるだろう。
ただ天性の柔らかいタッチからの鋭い攻撃、ドリブル突破からの豊富なアイディア、パスワークを用いた組織破壊、一瞬のひらめきなどはイニエスタより劣る面がある。
ただイニエスタをポゼッションの申し子と称するなら、マタは堅守速攻の権化と言っていいだろう。現在の神戸のスタイルを考えると、マタはイニエスタより高い確率でフィットするだろう。