不便な状況だからこそ音楽の魅力が引き出される

©日比谷音楽祭実行委員会

――日比谷音楽祭2024のステージを振り返ってのご感想をお願いします。

おかげさまでいい天気に恵まれ、音楽を楽しむには非常に適していた環境でしたし、「たくさんの人に来てくださって良かったな」と思っています。

――今年は新しく設けられたHIDAMARI(日比谷公園 健康広場)でのパフォーマンスでした。これまでとの違いを感じられた点はありますか?

そうですね。今回のステージは日比谷公園の一番端に位置していて、おそらくわざわざ足を運んでいただかないと、なかなか辿り着きにくいロケーションだったのではないかと思いますが、そのぶん僕も非常にやりやすい状況で演奏させてもらうことができましたし、会場の熱狂にもつながったのかなと思っています。

――GAKU-MCさんは1回目の2019年から日比谷音楽祭へのご出演を続けられていますが、初めてオファーを受けたときのことを聞かせて下さい。

亀田さんとの付き合いが長いので、詳しい状況を覚えているわけではありませんが、音楽祭を開催する前に、彼らしい言葉で「さまざまな層の皆さんに“本当の素晴らしい音楽”を届けるようなコンサートをやるつもりだから、ぜひ宜しくね」と言っていただいたことを覚えています。

――以前、亀田さんから「ニューヨークのセントラルパークで見たフリーコンサートの光景が日比谷音楽祭を始めるきっかけになった」とお伺いししましたが、GAKU-MCさんはキャリアに影響を与えたイベントは何かありますか?

そうですね。やはり2005年に始まり、僕も1回目から出演させていただいているapbank fes なくして、僕の音楽人生を語ることはできません。

フェスが掲げる「サステナブル」を軸にしたコンセプトや、そこに集まった若いスタッフの皆さんがみんなで必死になってイベントを作り上げていく様子もそうですし、本番に向けて何度もリハーサルを重ねながら物事を突き詰めていく姿勢など、さまざまなことを学ばせてもらいました。

僕らミュージシャンはもともと音楽が好きで、音楽を始めているんですけど、「そもそも何のために音楽をやっているのか?」を突き詰めていくと、その深層には「世の中の役に立ちたい」とか「良い方向に社会を変えていきたい」とか、「自分だけではなく、周囲にいる方やファンの皆さんにもより良い暮らしをしてもらいたい」という思いがあって、それらが音楽活動のモチベーションになっていることに気付かされたんです。

そしてapbank fesが始まった頃に、僕自身のライフステージにも変化があって。結婚して子供が産まれたくらいの時期に、「子供達が大人になった時に、彼らはどんな暮らしをしているんだろう?」とか、「“パパたちの世代のせいで、私たちがこんな暮らしをするようになってしまった”と言われたら嫌だな……」と考えたりして、僕なりにさまざまな問題に向き合った思い出が記憶に残っています。

――野外フェスやキャンピングカーでのライブなど、自然に出向いてのパフォーマンスに積極的な印象を受けるのですが、どのような思いがあるのでしょうか?

単純に僕自身が楽しいことをしたり、笑いながらたくさんの人々が集まってくる雰囲気が好きなことも理由の一つですが、時代が進むにつれて科学が進歩し、だんだん生活は便利になる一方で、外で寝泊まりながら音楽を演奏するような、不安定で不便な状況がかえって音楽の魅力を引き出すように感じることもあることに気付かされて。家やスタジオなどの安定して音が出せる環境では味わえないようなサウンドを野外フェスティバルやキャンピングカーでライブでは追い求めているのかもしれません。

ーー日比谷音楽祭では異なるジャンルで活躍するミュージシャンの共演が毎年注目を集めていますが、GAKU-MCさんのパフォーマンスや音楽制作にどのような影響を与えていますか?

今回で言うと、僕の出番の前に同じステージに立ったMONGOL800のキヨサクくんのパフォーマンスがとにかく素晴らしかった。彼は“UKULELE GYPSY”(ウクレレジプシー)という名義でウクレレを演奏していたんですけど、ウクレレののんびりした音を聞いていると、だんだん気持ちが穏やかになってきて、僕自身は「ガンガンと盛り上げていこう!」と思っていたんですけど、ウクレレの音に引っ張られるような感覚がありました。

でも、色々なミュージシャンの良い影響を感じとることもこのようなフェスティバルの 魅力の一部ですし、自分の予想しなかった一面を見つけられて、楽しいステージになりました。