開催中のパリ五輪で、U-23日本代表はグループステージを首位通過した。
グループ全勝は前回の東京大会に続いて2大会連続であるが、無失点での突破は初めてのこと。中2日という過密日程の中、選手をうまくローテーションした大岩剛監督の手腕は褒められるべきであろう。
その手腕によって生かされているのが佐藤恵允(ヴェルダー・ブレーメンU-23所属)だ。
パリ五輪の本大会は当落線上かと思われていたが、先発・途中と合わせてここまで全3試合に出場。イスラエル戦では左サイドで先発起用され、後半途中には右サイドへポジションを移して決勝点をアシストした。
父親がコロンビア人である彼は、高い個人能力とアグレッシブなプレーを持ち味とする。一番の武器は左サイドから内に切れ込んだドリブルで、主力が呼ばれなかったアジア競技大会にも主力組から唯一選ばれ、この左サイドで存在感を示した。
ただ今年のU23アジアカップでは「10番」を背負いながら空回りするプレーが目立った。特にフィニッシュには大きな課題があり、先日のマリ戦でも決勝点を生むシュートを放ったものの、クロスに良い形で入りながら自身では決め切ることができなかった。
パリ五輪では背番号は18へと変わったが「左サイドの佐藤」に対するファンたちの反応はシビアである。その一方で「右サイドの佐藤」は新しい可能性をみせているかもしれない。
パリ五輪の直前に行われたフランスとの強化試合では、途中出場で右サイドに入りドリブル突破で見せ場を作った。イスラエル戦は上述のようにアシストを記録している。
得意の左サイドでは視野が確保され、突破やシュートなどの選択肢が豊富なことが逆に力みや迷いなどを生じさせているようにみえる。それが右サイドでは、選択肢はいわば縦しかない。その限られた選択肢の中で思い切ったプレーができており、それがイスラエル戦のアシストにつながったといえる。
世代屈指の逸材ながらパリ五輪メンバー18名に含まれなかった海外日本人11名
自身で「自分はこのチームの中で一番下手な選手」と語るように、細かな技術や連携面では他の選手たちに比べて見劣りする。反面、粗削りながらも彼のスピードと馬力は他の選手にない武器である。
その特性は現時点では右サイドでこそ生きる。うまくハマれば、A代表の伊東純也のようにチームに“幅”をもたらしてくれる貴重な存在にもなり得るだろう。