ベテランと若手が混じるイレブンの中で
試合序盤こそG大阪にペースを奪われた神戸だったが、守備陣は前線の選手たちを信じて苦しい時間を耐えた。中堅としてチームを支える背番号19はディフェンスラインに声を掛け続けてチームメイトを鼓舞。ディフェンスリーダーとしての自覚と振る舞いはここ数年で培われた。
「ディフェンダー陣は『耐える』部分を90分通してできていたと思います。ピンチもありましたが、去年の優勝が経験として生きました。それこそ、前節のヴェルディ戦(J1東京ヴェルディ戦)では、最後に追いつかれてしまったので、チームとして改善できた」
神戸は気迫の守備を続けたディフェンス陣の粘りが、値千金の決勝点を生み出した。
後半19分、GK前川黛也(だいや)からのロングパスを起点に、FW大迫勇也、FW武藤嘉紀(よしのり)とパスがつながり、一気にゴール前へ侵入。ボックス内左側でフリーの状態となった武藤が中へ出したボールは相手DFのクリアミスを誘い、最後はこぼれ球に詰めていた宮代が右足でゴール左側へ押しこみ先制した。
前半から初瀬は同サイドでコンビを組んだ宮代に対して、「絶対に(ボールが)こぼれてくるから我慢しろ」と言い続けた。
その言葉を信じて走り続けた24歳について左サイドバックは「絶対的な結果が残せる選手です」と高く評価。そのうえで「大聖も慣れないポジションだった中で、チーム全体として大聖をサポートできていると思います」と、チーム全員で掴んだ勝利と強調した。
逆サイドの酒井をはじめ、大迫、武藤といった元日本代表選手たちの中で揉まれ続けている初瀬。同点に追いつこうと猛攻を仕掛けたG大阪の攻撃を防いだ際には、サポーターに向かって雄叫びを上げた。
天皇杯決勝という大舞台で、本来の力を発揮した初瀬は、ベテランと若手選手をつなぐ中堅として次を見据えていた。
「ベテラン選手と若手選手を含めたチーム全体として勝利できた。中堅の僕たちも、ベテランの人たちについていく気持ちがあるからこそ、すごくいいチームになっていると思います。誰が出ても結果が残せるところが自分たちの強みだと思うので、次のまた2試合に向けて、しっかりと準備したいです」
ガンバ大阪MF倉田秋が明かした勝負の明暗…FW宇佐美貴史不在のチームが天皇杯決勝で出せなかったもの
神戸はJ1連覇までリーグ戦残り2試合。連勝すれば文句なしの2冠達成だ。「結果がすべて」と言い切る初瀬がエンブレムに星を増やす。
(取材・文 浅野凜太郎、写真 Ryo)