ベテランから学んだ目指す道

負傷続きで、決して順風満帆ではなかった3年間だった。昨年8月に右ひざ前十字靭帯損傷と全治8カ月の大ケガを負い、今季は2度も右ひざの半月板を損傷。万全な状態で今季はプレーできなかったが、気持ちを切らさずにトレーニングを積んできた。

ボールを奪う西田(左)

「リーグ戦が終わってから、長野のスタッフの方に『トライアウトに行くので、グラウンドを開けてほしい』とお願いしました。そしたら先輩が『俺も練習するよ』と参加してくれました。昨日も長野でトレーニングをしていましたし、付き合ってくれた先輩やスタッフの方にはすごく感謝しています」と仲間たちの支えも大きかった。

紅白戦に向けてウォーミングアップを始める選手たち。各々がボールを使いながら身体を温めたり、リラックスして談笑を交わす中、積極的にマーカーの準備や後片付けに取り組む西田の姿があった。

「どんな意味でここに来ているのか。プレーの良し悪しはもちろん、コーチングや気持ちの部分でやれることを意識しました。誰にでもできるけど、意外にやらないと思うんです。自分は長野でプレーしていた中で、ベテランの先輩にその部分をすごく言われていました」

長野では34歳のDF砂森和也らベテラン選手を手本にプロとしてのイロハを学んだ。彼らから教わったプレーや立ち振る舞いは、かけがえのない財産となり、トライアウト会場でもその姿勢が垣間見えた。

およそ25分間行われた紅白戦では、右CBとして2本に出場。JFLや地域リーグも視野に入れつつ、J3以上を希望している21歳は、Jリーグでコンスタントに出場機会を増やし、マリノスへ戻るための1歩目を歩み始めた。

「俺、本当にマリノスが大好きで…。(MF)水沼宏太選手は若くして外に出て、そのまま30歳近くでまた帰ってきたじゃないですか。

自分の先輩でもそういう人がいる。いつになるかは分かりませんが、また自分は日産(スタジアム)でプレーしたいですし、マリノスに戻る日が来るように、ここからまた頑張りたいです」と再びトリコロールのシャツを身にまとう覚悟を口にした。

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横浜の名門で思い描いた貢献はできず、退団が決まった。それでも一度マリノスを離れて再び日産で観客を沸かせた元日本代表MF中村俊輔さんを筆頭に水沼、GK飯倉大樹と偉大な先人たちが帰還の道を築いている。『民衆の歌』が響き渡る日産のピッチに立ち、再びトリコロールの戦士として帰還してみせる。

(取材・文 浅野凜太郎、写真・浅野凜太郎)

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