[第103回全国高校サッカー選手権1回戦、正智深谷高(埼玉県代表)2-1長崎総合科学大附属高(長崎県代表)、29日、埼玉・NACK5スタジアム大宮]
高校サッカー選手権1回戦が29日関東圏各地で行われ、正智深谷高が2-1で長崎総合科学大附高を破り、地元埼玉で1回戦突破を成し遂げた。
巧みにボールを動かしながら、守備では体を張って守り続けた正智深谷高は8大会ぶりの初戦突破を決めた。
有言実行の背番号10が勝負を決める
前半37分に正智深谷高の小島時和(ときかず)監督が「入るんじゃないか」と予感したというDF鹿倉颯太(そうた、3年‐カムイFC)が蹴ったコーナーキックから、MF小西聖七(せな、3年‐カムイFC)がヘディングで合わせて同校が先制点を挙げた。
その後、前半41分に長崎総合科学大附属高の同点ゴールを許すも、後半13分に再び鹿倉の縦パスが起点となり、最後はMF近藤七音(なおと、3年‐FC多摩ジュニアユース)が右足ミドル弾で勝ち越しに成功した。終盤は相手のフィジカルを生かしたパワープレーに苦しむも、粘り強い守備で最後まで1点差を守り切った。
この試合でチームを1回戦突破に導く勝ち越しゴールを記録した近藤は、足裏を使ったボールキープや相手の背後をつくスルーパスで攻撃の起点となった。
「背後へのパスは自分の武器だと思っているので、サイドの選手を活かすパスは何回かできたかと思います。相手の矢印が強く来るというのは分かっていました。自分が足元で受けるより相手のギャップで受けて、そこで受ければ相手が一つ遅れてくるので、その矢印を上手く使って逆を取ろうと思っていました」と自身のプレーを振り返った。
正智深谷高の背番号10にとって、全国の舞台までは決して平たんな道のりではなかった。中学時代に所属していたFC多摩ジュニアユースでは、厚い選手層に阻まれ、ほとんど出場機会に恵まれなかったという。今年の選手権の埼玉県予選では優勝したチームの中で、自身は無得点に終わった。
「エフタマ(FC多摩ジュニアユース)ではいい選手が多くいて、あまり試合に出ることができませんでした。クラブユース(日本クラブユースサッカー選手権大会U-15)でも少しだけしか(試合に)出られなかったので、僕にとってほぼ初めての全国の舞台で結果を残せたのはうれしいです」
中学時代に挫折を味わった近藤だが、正智深谷高での3年間で「自分の武器をどう出していくか」を身につけ、自信を持って持ち味を発揮できる選手へと生まれ変わった。
長崎総合科学大附属高との試合前には、小島監督に「きょうは僕がヒーローになります」と宣言していた近藤。その言葉通りの活躍を見せ、県予選での不調のうっ憤を晴らした。この日の近藤の活躍に、小島監督も「七音がやっと点を取ってくれた」と安堵(あんど)の笑みを浮かべた。
2回戦の対戦相手は選手権で3度の優勝を誇る名門の東福岡高(福岡県代表)だ。それでも、自分のプレーに自信をつけた近藤は物怖じしない。
「(東福岡高は)プレミアリーグ最高峰の相手です。その相手にどれくらい自分たちのサッカーができるのか楽しみです」と白い歯をこぼした。
10代の怪物!高校卒業後ヨーロッパ1部の強豪クラブに加入した日本人9名
今夏のインターハイ王者である昌平高が敗退した激戦区の埼玉県予選を勝ち抜いた正智深谷高が次戦で強敵を打ち破り、前回出場で届かなかった準決勝進出の足がかりにする。
(取材・文・撮影 Ryo)