即座に気付いて、スペースを埋めるために迎撃に向かうヴィダルだが、一瞬反応が遅れている。FWのプレスも連動しておらず、レアルとしては余裕を持って回避可能な状態だ。

「自主的に動いた」、というより「動かされた」状態になってしまったヴィダル。彼を釣り出すことに成功し、ハメス・ロドリゲスが手薄になったスペースへと侵入する。ピルロの周辺を守る兵隊がいない状態で、そのエリアを狙われることになってしまったのだ。

このプレーが、結果的にキエッリーニがPKを取られてしまった場面に繋がって行く。

最も重要なのは、ヴィダルが最も重要なエリアから釣り出されてしまった事だ。後ろに下がってプレッシャーに参加しようとはしているものの、追い着けてはいない。ベンゼマのフリーランによって中盤が惑わされ、最も危険なピルロ周辺のエリアでハメス・ロドリゲスにボールを持たれてしまった。

復帰したフランス人FWカリム・ベンゼマの頭脳的な動き出しでヴィダルを誘い出し、貴重な先制点を奪い取ったレアル・マドリード。カルロ・アンチェロッティ率いるスペイン2強の一角は、本領を発揮してイタリア王者の喉元を食いちぎったかに見えた。CL屈指の守備陣相手に得た先制点の価値は、安いものではなかったはずだ。

しかし、マキシミリアーノ・アッレグリは1人静かに策を練っていた。将棋の棋士が「棋は対話なり」という言葉を重要視するように、アッレグリは盤を挟んで向かい合うアンチェロッティの言葉に耳を傾けていたのだ。

トップレベルの心理戦、戦術のぶつかり合いの中で、思慮深きイタリア人監督が見つけ出した答えとは一体何だったのだろうか。≪後編へ≫

※編集部:興味深い縦視点の動画があったので追加。

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