興味深い「超大胆なターンオーバー」

実力者が揃うスカッドをまとめるのが、就任1年目の横内昭展監督だ。

横内監督と言えば、サンフレッチェ広島および日本代表で森保一監督を“右腕”として支えてきたことで知られる。昨年のカタールワールドカップ後に日本代表のコーチを退任し、今季より磐田の監督に就任した。

今シーズンの磐田は、リーグトップタイの54得点を記録する攻撃力が最大の武器となっている。最終ラインからのビルドアップで相手守備陣を動かしつつ、打開力に優れたアタッカーたちに自由を与えることで、個の力を巧みに引き出す横内監督の手腕が光る。

特に一番のストロングポイントとなっているのが、サイドアタックだ。右サイドの松本昌也(今季リーグ戦6ゴール)と鈴木雄斗(同3ゴール)、左サイドのドゥドゥ(同6ゴール)、松原后(同5ゴール)を軸とした攻撃は迫力満点で、この4人で総得点の37%を叩き出している。

なお、エースのジャーメイン良が今季リーグ戦8ゴール(総得点の14.8%)を決めているが、そのジャーメインに依存することなく、どこからでもゴールを奪える点が特長である。

そして、非常に興味深いのが、指揮官の超大胆なターンオーバーだ。連戦が続いた6月下旬から7月上旬の期間で、横内監督は思い切った策を講じた。

上図は、第21節・ヴァンフォーレ甲府戦と第24節・ツエーゲン金沢戦のスタメンである。(右ボランチは甲府戦が針谷岳晃、金沢戦が鹿沼直生)どちらの試合でも共通しているのが、フィールドプレーヤー10人を前節から丸々入れ替えている点だ。

この期間は中2日ないし中3日でリーグ戦が続くハードスケジュールだったが、チームの軸となる選手以外を入れ替える、または守備陣はそのままに前線の選手だけ入れ替えるなどの一般的なターンオーバーではなく、ゴールキーパーの三浦龍輝以外の10人をチェンジする形で手を打った。

フィールドプレーヤー10人を入れ替えることにより、試合に出場しない主力選手の疲労回復およびケガのリスクを減らすことができる反面、チームとしての機能性が失われる可能性も大きくなる。

特に第21節の相手だった甲府はその時点で6位。超大胆なターンオーバーにより攻守の歯車がかみ合わず、大敗を喫してもおかしくはなかった。