しかし、その甲府戦を1-1で引き分けると、同じく10名を入れ替えた金沢戦は2-1で勝利。どちらの試合でもゴールを決めたファビアン・ゴンザレスの活躍もあり、連戦が続いた6月下旬から7月上旬の期間(第21節から25節)を3勝2分と無敗で乗り切ってみせた。

また、控えの選手たちがチャンスをつかもうとアピールしたことにより、チーム力の向上も実現させている。仮に負けが込めば求心力の低下も考えられる中、思い切った決断で結果とチーム力向上を両立させた横内監督の胆力には恐れ入る。

ここは推測となるが、このような大胆な決断はかつて仕えた森保監督の影響があるかもしれない。森保監督は選手の入れ替えを躊躇なく行うタイプであり、カタールW杯でもグループステージ第2節のコスタリカ戦でメンバーチェンジを断行した。

横内監督は日本代表コーチを退任する際に「東京オリンピックではメダル獲得まであと一歩及ばず、ワールドカップでも目標達成とはなりませんでしたが、自分が得たものは言葉で表すことができないほど大きいと感じています」とコメントしたが、マネジメントにおいても参考になる点は多かったはずだ。

天王山で突き付けられた課題

指揮官のマネジメントも冴え、リーグ戦11試合負けなし(8勝3分)と好調の中で迎えた首位・町田ゼルビアとの天王山。2本のPKを決められてリードを許すなど町田ペースで試合が進み、後半アディショナルタイムに松原后が一矢報いたものの、反撃は届かず1-2で敗れた。

このビッグマッチは両軍とも4-2-3-1が採用されるミラーゲームとなったが、町田は周到な磐田対策を施して臨んだ。敵将の黒田剛監督は試合後、以下のように語っている。

「磐田さんは全得点の30%がクロスからの得点です。そのため、できるだけクロスを上げさせないことで優位性を保てるという考え方の下、ボランチやCB、SBを含めて、クロスを入れさせないことが功を奏しました」

磐田の武器であるサイドアタックを封じるため、右サイドハーフのバスケス・バイロン、左サイドハーフのエリキが精力的なハードワークでサイドをしっかりとケア。最大の強みが発揮できない磐田は後手に回ってしまった。

また、磐田のベースである最終ラインからのビルドアップも入念に研究されていた。町田は藤尾翔太(1トップ)と髙橋大悟(トップ下)を軸としたハイプレスで磐田のビルドアップを分断したが、対する磐田のパスワークには大きな工夫が見られず、プレッシャーに苦しんでロングボールを蹴るも、相手ディフェンダーに回収されるシーンが散見された。