先のワールドカップ南アフリカ大会でベスト16に進出し旋風を巻き起こした日本代表。その中にあって左サイドバックとして全試合にフル出場し、印象的なパフォーマンスを見せた長友のプレイは各国のスカウトの目にも止まり、複数の移籍報道が飛び交う中、2010-11シーズンよりセリエAチェゼーナへの移籍が発表された。(買い取りオプション付きのレンタル移籍)
このチェゼーナと言うチームはあまり日本のファンの間でも耳にしないチームであるが、それもそのはず。最後にAの舞台で戦ったのは1990-91シーズンまで遡り、20年ぶりの1部リーグ参加となるクラブなのだ。当然戦力的には常連チームより劣り、苦しいシーズンが予想されるが、海外初挑戦となる長友がプレイする環境としては悪くないと言える。さて、このチェゼーナというチームはどのような選手が在籍しているのだろうか。Gazzetta dello Sportの予想フォーメーションと照らし合わせながら見てみたい。
まず、カルチョファンに馴染みがある選手は、ゴールキーパーのアントニオーリだろう。中田英寿がプレーしていた当時のローマに在籍していた実力派のゴールキーパーだ。他には中盤のコルッチ、カゼールタなどもプロヴィンチャ中心ではあったが、セリエAで実績を残している。そして昨シーズン、セリエBでブレイクしたスケロットが注目プレーヤーとして挙げられるだろう。アルゼンチンにルーツを持ちながらイタリアのU-21代表でプレーするサイドアタッカーは、2010-11シーズンのスター候補生の一人だ。だが、現時点の戦力では各所に実力者を揃えるものの、残念ながら十分に戦力が整っているとは言えない状況と言わざるを得ない。
次に長友がレギュラーポジションを獲得できるかについて考えてみたい。長友が得意とする左サイドバックで起用されると想定すると、ポジションが重なる可能性があるのはチェコ人のペトラーシュである。ペトラーシュは守備に定評があるが攻撃面での貢献度は非常に低く、ペトラーシュが入った場合は左サイドの攻撃はジャッケリーニの単独突破程度しか期待できない。トータルバランスを考えれば、攻守両面で貢献出来る長友がポジションを掴んでも何ら不思議ではない。中盤ワイドに位置するであろうジャッケリーニは、右利きで小柄なプレーヤー故に、ボールのオン・オフにかかわらず、中へ侵入するプレイスタイルが特徴的、そうすると当然ながら長友がオーバーラップするスペースが出来るため、相性も良いと言える。仮に右サイドのチェッカレッリの位置に長友が入ったとしても、単独突破も周囲を生かすプレイも選択できるスケロットとならば共存可能と考えられる。
以上のことから、長友がチェゼーナにおいて活躍できる要素は整っており、日本のファンも彼がいつ試合に出るのだろうとやきもきする状況は低いだろう。それよりも、長友がワールドクラスのサイドアタッカーと対峙するシーンを楽しみに待っていた方が良さそうだ。イタリアそして欧州王者であるインテルには、現在世界最高のサイドバックと称されるマイコンがいる。マイコンとのマッチアップは、長友自身が目標として掲げる「世界最高のサイドバック」実現に向けてこれ以上ない貴重なものになるはずだ。そして、マイコンと対等にやり合えるようになったその時、彼が掲げる夢は現実に近づくだろう。