9月7日。日本中が興奮したW杯の終了後初めての代表戦が終了した。すっかり過去のものかと思っていたあの熱狂は、まだまだ“余熱”を残していたようで、横浜で行われたパラグアイ戦、大阪で行われたグアテマラ戦は両試合とも超満員。元日本代表監督・イヴィチャ・オシムは「この大会が終わっても日本代表をサポートしてください」と、W杯終了後に日本のサッカーファンへ向けてメッセージを残したが、その思いも少しは届いているのかもしれない。

さて、日本代表史上初の「海外の監督市場に参戦して代表監督探し」に挑み、すったもんだの挙句、(日系人通訳からの紹介があった噂される)アルベルト・ザッケローニが新たなサムライ・ブルーの舵取り役となることが決まったが、労働ビザの発行問題もあり、上記の2試合は原博美代表監督代行が指揮を執ることに。“予定になかった”急造監督が率いたチームを評価することは酷かもしれないが、イタリア人指揮官にバトンタッチをする前に、この親善試合を通して、どうしても筆者が触れておきたいと感じたところを記しておきたい。

◆結局、この形?◆

W杯南アフリカ大会前、テストマッチで芳しい成績を上げられず、暗中模索の末にこれまでのサッカースタイルを捨て、“負けないこと”を重視した戦術に変更。そして、これが功を奏し、ベスト16へ進出した経緯は周知の通りだが、このパラグアイ、グアテマラとの2連戦では、「好守を素早く切り替え、前からプレッシングをかける。そして、ボールを支配して試合の主導権を握る」という、岡田武史の旗の下で目指していたサッカーに戻っていた。

とは言え、この色が継続されるかどうかという問いに対しては、答えに困る。まず、アルベルト・ザッケローニという男が信奉するサッカースタイルを整理する必要があるが、何よりも先に取り上げなくてはならないのは、「ザッケローニは3トップを使用する攻撃的な監督だ」という報道ばかりが独り歩きしているが、ウディネーゼやミランを率いてた時に好んで3枚のFWを並べ、さらに結果も残していたことは事実だが、「ザッケローニ=攻撃的」という等式は成り立たないということだ。

その理由は、彼の真骨頂は、手元にあった駒を有効利用した上で、チームにバランスを植え付ける手腕にあるからだ。最前線に3人のプレイヤーを並べた所以は、このポジションに有能な選手が存在したからであり、それを有効利用したからに過ぎない。「タレント不足」であったユーヴェ時代やその他のクラブなどでは、オーソドックスな4-4-2にシフトチェンジしたこともあるように、それはチーム力のバランス低下をさせてまでフォーメーションを決めることはない。彼の第一優先はチームに攻守のバランスを発生させることにあるのだ。

ザッケローニの選手選考はまだまだこれからだが、彼が「この形が日本代表に相応しい」と導き出したシステムは4バック、3バック、2トップ、3トップと何だってあり得る。「攻撃的」、「3バック」、「3トップ」というイメージばかりを頭に浮かべ、日本の新たなスタイルを期待することは避けたほうが賢明だろう。そして、彼が最終的に行き着いた先は、批判も続出した「岡田JAPANの攻撃的戦術」より魅力的ではない可能性があり、世界を驚かした「岡田JAPANの守備的戦術」よりもすぐに結果を出せない可能性もあるという覚悟もしておかなければならないだろう。スクデット獲得という輝かしい経歴の持ち主であるとはいえ、ザッケローニは決してスーパーな監督ではない。

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