先日、何気なくセリエBの試合チェックしていたのだが、そこには懐かしさが漂っていた。対戦カードはフロジノーネとレッジーナ。「今季のセリエA昇格は難しい」と予想されている両クラブであるが、ピッチ上で躍動していた選手達の中に、日本のカルチョファンにとっても馴染みのある名前があったからだ。
フロジノーネのゴールを守るのは、ヴィンチェンツォ・シチニャーノ。スキンヘッドが印象に残る選手で、レッチェ、キエーヴォなどで活躍。2003年には中田英寿と同僚になったこともある。対するレッジーナの最前線に陣取るのはエミリアーノ・ボナッツォーリ。ご存知の方も多いと思うが、中村俊輔が初の海外リーグ挑戦を行った時のチームメイトである。
だが、私が最も懐かしさを覚えた“ジョカトーレ”は彼らではない。「フロジノーネの21番」であった。
◆セリエAに吹き荒れたエンポリ旋風◆
今からほんの数シーズン前に、エンポリという名のクラブがセリエAで戦っていたことはご記憶している方はいらっしゃるだろうか?2001-2002シーズンにクラブ史上3度目となるセリエA昇格を果たしたエンポリは、中盤にはオーストラリア代表のヴィンチェンツォ・グレッラ。イタリアトップクラスのファンタジスタと称される、イグリ・ヴァンヌッキらを配置し、さらに、前線には、現在はユヴェントスで活躍している、アントニオ・ディ・ナターレと今はラツィオで9番を背負っているトンマーゾ・ロッキ。そして、かつてはレアル・マドリー入りも噂されたフランチェスコ・タヴァーノら強烈なタレントを持った顔ぶれを並べ、魅力的なサッカーを披露。守備がセリエBレベルであったこともあり、2003-2004シーズンには降格してしまうが、彼らが見せてくれたサッカースタイルに惚れ惚れしたカルチョファンは私だけではなかったはずだ。
その後もエンポリは、1年で再びセリエAへの復帰を果たすと、更なる成長を遂げて不動のエースとなったタヴァーノや数年後にユヴェントスへの移籍を果たすこととなるアルミロンが中心となり、再昇格初年度は10位(その後カルチョスキャンダルにより、8位に上昇)。翌季には7位に輝き、(経済的な面でUEFAライセンスは下りなかったが)UEFAカップ出場権も手にするなど。2007-2008シーズンのセリエB再降格まで、クラブ史上に残る黄金時代を築いた。
以降は、ミランのイニャーツィオ・アバーテ、ユヴェントスのセバスティアン・ジョヴィンコやクラウディオ・マルキージオが武者修行の場としてレンタルで加入したこともあるように、ビッグクラブで期待されている若手の“登竜門”のような位置付けのクラブとなり、かつてのようなチーム力自体はなくなってしまった。
だが、今季に関して言えば、イタリアユース代表経験者であるサルヴァトーレ・フォーティ、ロベルト・ソリアーノ、ディエゴ・ファッブリーニら若き才能だけではなく、グルジア代表のレヴァン・ムチェドリーゼ、スロベニア代表のヤスミン・ハンダノヴィッチ、U-20コロンビア代表のリカルド・チャラ、ポーランド代表のアダム・ココシュカなど、有能な外国人選手も所属しており、久しぶりのセリエA昇格も果たせるのではないかと予想する現地メディアもあり、かくいう筆者もその可能性を高く見ている。
さて、エンポリのクラブ紹介が長くなってしまったが、そろそろ今稿の主役である「フロジノーネの21番」に話を移そう。
(筆:Qoly編集部 T)