HOME > コラム > 【取材】海外サッカーファンの新たな“居場所”~コミュニティとして機能する「サポクラ」の正体~ 【取材】海外サッカーファンの新たな“居場所”~コミュニティとして機能する「サポクラ」の正体~ 2012/11/28 22:21 Text by くわけん 兵庫県西宮市在住の大学生。競技としての魅力はもちろん、文化や側面としてのサッカーの魅力を一人でも多くの人に伝えたいです。サッカー実況界の神=倉敷保雄さんと写真撮ったことだけが自慢。 記事一覧 ▼新たな体験としてのフットサル これらのサポーターズクラブのコミュニティをより醸成させているものの中で、 定期的に開催されているフットサルの存在は外せないだろう。各日本公式サポーターズクラブでは、クラブ内で行われるフットサル企画以外にも、他のサポーターズクラブとの合同練習や練習試合を定期的に行うなどして、クラブの内外を問わず親交や交流を深めている。 2012年9月8日、私は大阪某所で行われたインテルクラブ・ジャポネとリバプール・サポーターズクラブ日本支部による練習試合を見学してきた。ここではその様子を報告しつつ、そこから感じ取ったものを述べてみたい。 この日練習試合に参加したのはインテル側14名、リバプール側7名の計21名。当然、全員が贔屓のクラブのユニホームを着用している。ピッチ上では様々な選手名を確認することができた。また、大阪での開催でありながら東京や富山といった近畿圏以外からも多数の参加があった。 そこでまず感じたのは、このように同じチームのファンが集まり同じユニホームに袖を通してボールを蹴るという体験自体が新鮮だな、ということだ。これまで多くの海外サッカーファンにとって、クラブというのは「応援する対象」でしかなかったはずだ。プレーをするのはあくまで選手側であり、自分は彼らに想いを込めてテレビと向き合うしかなかった。 しかしそこにあったのは、同じクラブを応援する仲間と一緒にボールを蹴る喜びや幸せだった。お気に入りの選手になりきり、あたかも自分がインテルの選手になったかのような錯覚を覚える人もいるのではないだろうか。そういった、贔屓チームの存在を自己に投影する楽しみ方や体験性は、これまでの海外サッカーファンの中にはあまりなかったものではないだろうか。 ストレッチが終わると、チームを混ぜての軽いミニゲームが始まった。いざゲームが始まると、個人個人で技術やプレーレベルに大きな差があることに気付く。フットサルを始めてまだ日が浅い人、小さい頃からサッカーをプレーしている人など様々で、伺ってみると全員が全員ボールに長い間触れてきたわけではなかった。このことは、新しくサポーターズクラブへの入会を検討している人にとっても魅力的な条件なのではないだろうか。なぜなら、応援するチームさえ共通であれば、どのようなプレーレベルの人でも気楽にフットサルに参加できるからだ。性別やプレー経験に関係なく、楽しむことの出来る空気がそこには間違いなくあった。 また意外なことに、試合を待つメンバーの間では、インテルやリバプールの話題以上に、自身の学校や職場での話が多く飛び交っている印象を受けた。当然のことながら、彼らは「同じクラブのサポーター」という共通項で繋がっている。しかし、もはや彼らの関係はそれ以上に対等でフランクなものへと昇華しつつあるように感じた。練習試合の合間に、インテルクラブ・ジャポネのTさんはこのように語ってくれた。 「自分はもともと活動的な方ではなかったのですが、ジャポネに入会して以来、人と話したりいろんな人と出会ったりするのがこんなに楽しいことなのかと自覚するようになりましたね。また自分が大学生ということもあり、社会人の方と仲良くしていただく機会が増えたのはとてもいい経験になっています。飲み会や観戦会でも、私生活の話の方が意外と多かったりするんですよ。観戦会でも、キックオフ30分前になって初めて試合の話をしたりします(笑)」 もともと軽い気持ちで入会したTさんにとって、ジャポネの存在は今ではなくてはならない「生活の一部」だと言う。また、インテルクラブ・ジャポネ代表の @gotton1979さんにもお話を伺うことができた。 「ジャポネ設立のキッカケは、やはり長友佑都の加入でした。もともとインテルをずっと応援してきて、これまでにもファンを集めてみんなで何かできないかな、と考えていたのですが、公式ファンクラブ化となるとなかなか手続き的にも大変で、実行にまで移せずにいました。そこに長友がやってきたのですが、『これはインテルに日本の方を向いてもらう絶好のチャンスだな』と、まず感じましたね。その時ちょうどTwitter上で全国のインテリスタの方と繋がり始めていて、日本にもこれだけのファンがいるんだ、ということをインテル側にアピールしたかった気持ちが設立に大きく向かわせました」 「そこからは、やはりTwitterを通じて設立メンバーを募り、多数の方の協力を得て昨年8月の設立に至りました。設立の上では、ただの『手続き屋さん』にはなりたくないな、ということを個人的には考えていました。1人でも多くのインテリスタと良い関係を築いて、楽しく過ごせたら良いなぁと思いましたね」 インテルクラブ・ジャポネでは現在、関東で開催されているフットサルリーグ「サルポリーグ」にも出場しており、様々な属性のインテリスタが定期的に交流を深めている。インテルクラブ・ジャポネにとって、コミュニティの形成や存続という意味でも頻繁に開催されるフットサルが果たしている役割は大きいと言える。 3 / 4 前ページPrev 1 2 3 4 次ページ Next RELATED TAGS コラム (871) リヴァプール (5011) インテル (2132) チェルシー (4299) ナポリ (972) ラツィオ (685) くわけん (13) ユヴェントス (3007) アーセナル (5503) バルセロナ (6174) レアル・マドリー (5648) マンチェスター・ユナイテッド (5658) トッテナム (2088) サポーター (2256) イングランド (5217) イタリア (3403)
▼新たな体験としてのフットサル これらのサポーターズクラブのコミュニティをより醸成させているものの中で、 定期的に開催されているフットサルの存在は外せないだろう。各日本公式サポーターズクラブでは、クラブ内で行われるフットサル企画以外にも、他のサポーターズクラブとの合同練習や練習試合を定期的に行うなどして、クラブの内外を問わず親交や交流を深めている。 2012年9月8日、私は大阪某所で行われたインテルクラブ・ジャポネとリバプール・サポーターズクラブ日本支部による練習試合を見学してきた。ここではその様子を報告しつつ、そこから感じ取ったものを述べてみたい。 この日練習試合に参加したのはインテル側14名、リバプール側7名の計21名。当然、全員が贔屓のクラブのユニホームを着用している。ピッチ上では様々な選手名を確認することができた。また、大阪での開催でありながら東京や富山といった近畿圏以外からも多数の参加があった。 そこでまず感じたのは、このように同じチームのファンが集まり同じユニホームに袖を通してボールを蹴るという体験自体が新鮮だな、ということだ。これまで多くの海外サッカーファンにとって、クラブというのは「応援する対象」でしかなかったはずだ。プレーをするのはあくまで選手側であり、自分は彼らに想いを込めてテレビと向き合うしかなかった。 しかしそこにあったのは、同じクラブを応援する仲間と一緒にボールを蹴る喜びや幸せだった。お気に入りの選手になりきり、あたかも自分がインテルの選手になったかのような錯覚を覚える人もいるのではないだろうか。そういった、贔屓チームの存在を自己に投影する楽しみ方や体験性は、これまでの海外サッカーファンの中にはあまりなかったものではないだろうか。 ストレッチが終わると、チームを混ぜての軽いミニゲームが始まった。いざゲームが始まると、個人個人で技術やプレーレベルに大きな差があることに気付く。フットサルを始めてまだ日が浅い人、小さい頃からサッカーをプレーしている人など様々で、伺ってみると全員が全員ボールに長い間触れてきたわけではなかった。このことは、新しくサポーターズクラブへの入会を検討している人にとっても魅力的な条件なのではないだろうか。なぜなら、応援するチームさえ共通であれば、どのようなプレーレベルの人でも気楽にフットサルに参加できるからだ。性別やプレー経験に関係なく、楽しむことの出来る空気がそこには間違いなくあった。 また意外なことに、試合を待つメンバーの間では、インテルやリバプールの話題以上に、自身の学校や職場での話が多く飛び交っている印象を受けた。当然のことながら、彼らは「同じクラブのサポーター」という共通項で繋がっている。しかし、もはや彼らの関係はそれ以上に対等でフランクなものへと昇華しつつあるように感じた。練習試合の合間に、インテルクラブ・ジャポネのTさんはこのように語ってくれた。 「自分はもともと活動的な方ではなかったのですが、ジャポネに入会して以来、人と話したりいろんな人と出会ったりするのがこんなに楽しいことなのかと自覚するようになりましたね。また自分が大学生ということもあり、社会人の方と仲良くしていただく機会が増えたのはとてもいい経験になっています。飲み会や観戦会でも、私生活の話の方が意外と多かったりするんですよ。観戦会でも、キックオフ30分前になって初めて試合の話をしたりします(笑)」 もともと軽い気持ちで入会したTさんにとって、ジャポネの存在は今ではなくてはならない「生活の一部」だと言う。また、インテルクラブ・ジャポネ代表の @gotton1979さんにもお話を伺うことができた。 「ジャポネ設立のキッカケは、やはり長友佑都の加入でした。もともとインテルをずっと応援してきて、これまでにもファンを集めてみんなで何かできないかな、と考えていたのですが、公式ファンクラブ化となるとなかなか手続き的にも大変で、実行にまで移せずにいました。そこに長友がやってきたのですが、『これはインテルに日本の方を向いてもらう絶好のチャンスだな』と、まず感じましたね。その時ちょうどTwitter上で全国のインテリスタの方と繋がり始めていて、日本にもこれだけのファンがいるんだ、ということをインテル側にアピールしたかった気持ちが設立に大きく向かわせました」 「そこからは、やはりTwitterを通じて設立メンバーを募り、多数の方の協力を得て昨年8月の設立に至りました。設立の上では、ただの『手続き屋さん』にはなりたくないな、ということを個人的には考えていました。1人でも多くのインテリスタと良い関係を築いて、楽しく過ごせたら良いなぁと思いましたね」 インテルクラブ・ジャポネでは現在、関東で開催されているフットサルリーグ「サルポリーグ」にも出場しており、様々な属性のインテリスタが定期的に交流を深めている。インテルクラブ・ジャポネにとって、コミュニティの形成や存続という意味でも頻繁に開催されるフットサルが果たしている役割は大きいと言える。