久しぶりのリーグ戦。ミニキャンプを経てどんな試合を見せてくれるのかと期待半分不安半分で眺めていたが、少し興味深いものが見られた。復帰したフェライニの使い方である。
【フェライニとゲームメイク】
これまで何度もゲームメイカー不在を嘆いてきたが、マタが加入後ももう一列後ろから組み立てられる人材が必要だと挙げてきた。リオ・ファーディナンドが再び試合に出始めることで最終ラインのビルドアップはかなりスムーズになったが、それ以上に目を引いたのがフェライニの使い方であった。
クリスタルパレスが前からチェックにこなかったこともあるが、キャリックとセンターハーフを組んだフェライニはビルドアップに必要以上に関与せず、捌いたらするすると前線にポジションを上げていく。その代わりにルーニーが下がってボールを受け、マタ、ルーニー、キャリックで組み立てを行っていた。
ルーニーが最前線にいてファン・ペルシーと近い距離で仕事をする場面は多くはなかったが、引き気味の相手を崩すとなると、ボールを欲しがるルーニーとビルドアップに問題を抱えるチーム的にはこうなることが現実的にはベターな手法だろう。ワイドに構えたヤヌザイや、オーバーラップしてきたスモーリングにボールを供給して相手を押し込んでいった。
決定的なシーンを生み出しはしなかったが、左サイドに構えたヤヌザイに展開した場合は、中央に固まったマタやルーニーらに代わってフェライニがファーサイドポジションを取り、クロスから折り返しを狙っていた。相変わらずクロス中心ではあるものの、狙いと実行が見て取れるあたり、多少改善されたといえるのかもしれない。
組み立てがある程度完了すれば、ほぼ二列目にポジショニングをして自身の長所を活かそうとしたフェライニ。これを可能にしたのはマタ、ルーニー、キャリックというトライアングルのビルドアッパー達であり、今後もこれが変わりそうにはないだろう。何度か危ないカウンターをもらっていた点に関してはまだまだディテールの詰めが甘いと言えるだろうが、残りの枠は相手によって変化するだろうと考えられ、その狭い枠をめぐる戦いは激戦だ。
【やっぱりリオはエレガント】
一時期ピッチから遠のいてはいたが、エヴァンスらの怪我もあってリオがピッチに立っている。正直なところ、ここ最近パフォーマンスの良いスモーリングをセンターに固定したい気もするが、やはりコンディションが良い状態であれば、リオ・ファーディナンドというセンターバックはプレミア屈指の選手である。
ボールを正確に扱う技術はユナイテッドの最終ラインの中では一番だ。相手が寄せて来ようとも慌てたりはせず、正確なパスを繋ぐ事ができる。これがどれほど素晴らしいことか、というのは彼が最終ラインにいない間に嫌というほど思い知った。世代交代は避けて通れない故に、彼に取って代わるビルドアップスキルのあるセンターバックが必要なのだと改めて感じさせられた。
ボールを自然に扱う様はやはりエレガントであり、堂々とした姿勢と雰囲気で相手もむやみにチェックにいけない。キャリックとヴィディッチとは長く組んでいることもあってか、お互いに思ったタイミングで思ったボールを出し入れできているように見えた。そしてそれがいかに見るものを安心させるか、ということも改めて確認することができた。
私はジョン・テリーを好まないが、テリーとカルバーリョは近年のプレミアの歴史に確実に名を残すセンターバックデュオだ。贔屓目を加味しつつもリオ&ヴィダのデュオはそれ以上だと思っている。近年3度のCL決勝を経験したデュオなんて、他にいないだろう?
そんなデュオを久しぶりにキックオフから見ることが出来て、内容そっちのけで懐かしくなってしまった。やはり補完性に優れた完成度が高いものはいいものだ。これを超えるものをモイーズは作っていかねばならないが、そう思えばなかなか難しいことだということが分かる。
【まだまだ相互理解が不十分】
ドバイでミニキャンプを張った成果が見られたかと言われると正直怪しいが、プレービジョンのピントが徐々に合ってきている感じはある。それでもダイレクトで繋ぐなど、流れるようなプレーはまだまだ見られない。
長いこと組んできた最終ライン以外は皆と言っても差支えはないと思うが、特にルーニーとマタのリズムがいまいちしっくりきていない。ルーニーはまだ自分の欲しいタイミングで動き出しており、マタが出したい時のタイミングで動き出せてない場面が何度も目についた。どちらが良い悪いといった問題ではなく、まだピントが合ってないのだろう。仮にそこが上手く行けば一気に前線の破壊力は増すことは間違いない。その日が一刻も速く来ることを願うのみだが、それがとても難しいことだというのは、ボールを蹴っていれば容易に想像が付く。
まあそれは英国一の高給取りになる背番号10ならばやって当然だろう、と彼が新契約で一日に稼ぐ金額を眺めながら思っている。たかがフットボールで一日700万円以上稼ぐとか狂っている。それでも彼が再び大空を舞って華麗なるバイシクルをシティ相手に叩き込んでくれるのなら安いものだろう。ああ、狂っているのは私のその感覚の方に違いない。
筆者名:db7
プロフィール:親をも唖然とさせるManchester United狂いで川崎フロンターレも応援中。
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