軽傷だと思われていたファン・ペルシーが思いの外具合が思わしくなく、大一番を前にモイーズは慣らし運転を迫られていた。

相手はウェストハム、というよりもビッグサムと言ったほうが適切か。ロングボールというよりもハイボール主体の清々しいフットボールは健在。戦前から分かっていたことだが、これに対してモイーズはセンターバックにキャリックをチョイスする。ヴィディッチのサスペンションに加えてファーディナンドもコンディションが整わず選択の余地はなかった。ジョーンズも高さがあるわけではなくハイボールに対しては後手になっても仕方がない。

試合が始まればキャロルが左に寄ってラファエルに当たりにきた。もちろん高さで優位に立つキャロルを起点にしたいところだったのだろうが、ルーニーのスーパーなゴールは見事に出鼻をくじいた。試合を観戦していたベッカムがカメラに即抜かれるほど「既視感」のある素晴らしいゴールであった。

33分にはカウンターから追加点。ラッキーな形のゴールとなったが前半のうちに追加点を得て楽な展開になった。ここからモイーズがどう出るか気になったが大きな動きはなくダービーに向けて安牌を切ったように見えた。ルーニーとマタを休ませ無理はしない。良くも悪くも後半はあまり見所無く淡々と過ぎていった。

【好調フェライニと高さ対策】

ここ毎回フェライニが好調だと書き続けているので、今回また取り上げても驚きは無いだろう。時折ファールにはなるものの球際の強さは凄まじく、このパフォーマンスがマンチェスター・ダービーでも発揮されることを願うばかりだ。

高さ対策といってもどう頑張っても無理なところは避けて通れない。キャロルの高さにラファエルはどうしようもないのだ。そこは割りきって、チャンスを作られても最後の最後で体を張って凌げばいいのはこれまでと変わらず。この試合ではハイボール対策に、フェライニが度々最終ラインに吸収されていたが、ストロングポイントを活かして高さ不足の最終ラインをうまくフォローしていた。

【結果が欲しかった前線のユニット】

香川が先発し日本のメディアは賑やかになったが、やはり結果が欲しかった。ルーニーのスーパーとラッキーなゴールのみではやはり物足りない。香川のみならずマタやヤングにも言えることだが、崩しにかかるならかかるで結果が出なければこの「ユニット」としての魅力を発揮できていたとは言えなかった。

ヤングは毎度のことながら、皆感覚で出したパスがことごとく合わなかったり引っかかったりする場面が少なくなく、前後半共にもっと楽に出来たであろう場面が何度もあった。

ファン・ペルシーがしばらく離脱すると聞いた時にはウェルベックかチチャリートをトップに据えるのかと思いきや、久々にルーニーがトップの位置に入る。香川、マタ、ルーニーの組み合わせがどの様な化学反応を見せてくれるか期待したのだが、他の組み合わせを押しのけるようなパフォーマンスは見せられず、あくまで一つのオプションという位置に留まるだろう。もちろん実戦で試したのは初めてなのである程度差し引いて考えるべきだが、少ない時間でインパクトや可能性を感じさせたかと言われると難しい。ファン・ペルシーが一ヶ月ほど離脱する間に再びチャンスは訪れるのか。それはモイーズのみぞ知るところだが、もう一度このユニットが見たいと感じさせるパフォーマンスであったかは微妙なところだ。

90分プレーした香川だがやはりインパクトに欠けた。惜しいプレーは何度かあったものの味方に合わせようとする動きではなかなか難しい。それでも前にはルーニーしかいなかったのでいつもよりポジショニングはゴールに近い位置を保てていたように見えた。パスが出てくるこないを問わなければ、ラインの間で活きそうな香川を久しぶりに何度か見てとれた。ただしあくまで他の試合と比べた場合であって、なかなか絶賛するほどポジティブに評価できる動きではない。

代表でも似たような傾向にあるが、ドルトムントでの活躍を再度期待するのであれば、タテ・ヨコ・ナナメのライン間の隙間を見つける仕事に専念できる環境を勝ち取らなければならない。ゲームメイクなど考えるのはあくまでボールに触ってからの話であって、ボールを受ける前からゴールに直結しない動きに比重が傾けばやはり怖さはないのだ。

自身が活躍できる環境を勝ち取る為にはやはりゴールという結果が単純明快である。それこそがクラブの利益になると割りきって動ければ苦労はしないのだろうが、いつまでも「いい子ちゃん」なプレーを続けていては、自分の首をじわじわ締めているようなものである。率先して「悪い子」になれとは言わないし、「潤滑油」的な役割の重要性もないわけではないが、そのポジションに留まることが彼の望みだとは思えない。

シーズンも終盤に差し掛かってきたが、前線のユニットは未だに基本が定まっていない。ターンオーバーではなくとっかえひっかえな状況である故に、数字と内容を残せれば一気に花開く可能性もゼロではない。それが香川でも誰でも、結果をもたらしてくれるなら大歓迎だ。ビッグマッチは目前。インパクトを叩き出すにはこれ以上ない舞台が待っている。


筆者名:db7

プロフィール:親をも唖然とさせるManchester United狂いで川崎フロンターレも応援中。
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