ギリシャが見せた「オランダ式5バック風4バック」

厳密にはギリシャはスペインを破ったオランダの5バックを採用していた訳ではないが、とにかく中央に人を集めるという意味では発想に共通点があった。

ある意味ではスペインのように、DFラインと中盤の間に人を送り込むことに長けた日本に対し、あえてギリシャは下図のように中盤の白いエリアに穴を空ける。前の黒いエリアは雑ながら人数がいるので日本はボールを思うように回せない。それでも本田やボランチが出ていくスペースは広大に空けてあるので、勿論日本はそこにボールを出していく。そうすると、やたら中央に絞ったギリシャDF陣が待ち受ける。前を向いて出てくるCBやSB、ボランチで本田をケアしても、しっかりと他のアタッカーに対処出来るように中央が揃った状態で迎え撃ってくるという訳だ。

本来危険なはずのエリアを捨て、とにかく守備が前向きの状態で相手の攻撃に対処する。遠藤が出てくる可能性も危惧していたのかもしれないが、チーム全体でボールを繋がれて切り刻まれるよりは、とにかく相手の得意な形に誘導し、それを予測して防いでしまおうという割り切りが見える。

オランダは前に人が普通に残っている、というこの特性を利用してカウンターでスペインを粉砕した訳だが、残念なことにギリシャはアタッカー不足が顕著で、なかなかカウンターで形を作ることは出来なかった。しかし、繋ぎを妨害しつつカウンターを狙うという意味では、この戦術は非常に良く機能していたと言っていいだろう。

サイドからの形に対してはより顕著で、サイドバックが異常なほどに内側に絞って3バックのような形で中央を容赦なく閉じる。これは、日本の得点パターンとしての内側に入ってくる香川や岡崎に対し、より安心できるマンツーマンで対処してしまおうという策だった訳だ。実際日本が中央に入って行く大久保を起用したことで、この策は同様に嵌って行くことになる。驚くべきことに徹底して封じられた岡崎はシュートたった1本に抑えられている。

前に枚数を増やすことで攻撃に枚数を割かせず、単純化した攻撃を防ぐ。ある意味では日本が体験したことのないやり方のチームであったはずだ。結果的に、これでクロスを跳ね返され続けたこともあってか、最終局面では何故かファーへのハイクロスを狙っていく場面も目立った。空中戦に対して跳ね返されるイメージが出来てしまっていたのかもしれない。

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