ファン・ハールの守備を破るためには?メキシコの見せた工夫から。

メキシコは、オランダのスタイルに上手く対応した国の1つだ。例えばサイドバックの持ち上がりやCBの持ち上がりによって、オランダの狙いであるボランチのところを組み立てにおいて経由しないシステムを構築。更にボランチも低い位置を取る時はDFラインに入る、取らない時は高い位置に出る、というメリハリをつけることによって、オランダは結果的に普通にブロックを形成するような守り方になってしまった。メキシコ戦からも2つの場面を取り上げたが、オランダ側がボランチを取り囲めていないことが解るだろう。

この場面はサイドバックの位置からDFラインの選手が持ち運んできた場面。高めの位置を保とうとするメキシコの中盤に引き付けられ、普通の守備体系に近い形にされてしまっている。

これもDFラインから選手がボールを持ち運んだ場面だ。メキシコのセントラルハーフが高い位置を保っていることから、高い位置でボランチを取り囲むことが出来ず、結果的にメキシコのDFラインから簡単にボールを持ち運ばれてしまっている。1つのポイントとしては、ファン・ハールがアタッカー陣にそこまで守備を望んでいる訳ではないことだ。どちらかというと、この戦術の肝は「カウンター」にある。なので、ある意味ではプレッシャーをそこまで受けずに、DFラインを押し上げていくことは可能になるだろう。

このように、ボランチの選手を押し上げながら起点を高めることは1つの手だ。取り囲みたいとはいっても、前線の選手はカウンター用に残しておきたいというのもあり、全体がコンパクトになるようなことはない。そうなれば、下図のようにボランチを押し上げることで相手の取りたいエリア(白い円)に人がいない状況を作ってしまうことも可能だ。

これにより、結局中盤の選手は相手に合わせて下がらざるを得ない。一度中盤を下げてしまえば、そこから普通にボランチの位置を経由していくことも出来る。前からのプレッシャーに移行する意識が高ければ、更にマンチェスター・ユナイテッドの守備陣への負担は増えることになるだろう。

恐らく、中盤を飛び越えられてしまうリスクを軽減するために、ファン・ハールは中央の守備力が高い3バックを再び検討するはずだ。そういった意味では個人能力に優れたFWがいるチームは天敵になりかねない。中盤のサポートが少ない状態で守ることが求められるので、エバートンのルカク、チェルシーのジエゴ・コスタなどのようにフィジカルで戦えるタイプは天敵だ。相手の中盤を釣り出す囮として囲まれたエリアに入れてワンタッチでボールを戻し、そこからロングボールで勝負をかける形などは検討に値するだろう。

もし、このまま4バックを継続することとなれば、当然危険な場面は増えてくるはずだ。プレミアリーグが新たな戦術への適応が遅い傾向のあるリーグとはいえ、QPR相手だから防ぎ切れたような場面も少なくなかった。QPRは元々カウンターではなく攻撃的な構成で力を発揮するチームでもあったことから、ユナイテッド相手に引き下がった守備をしながら満足に攻撃することは難しく、結果的にマンチェスター・ユナイテッドの守備を脅かす場面も少なかった。ドリブラーへの対策、ワイドから切り崩された際のフォローなど、様々な課題も山積みになってくるだろう。

試合を見ていく限り、現在のマンチェスター・ユナイテッドは守備面ではオランダ代表でのスタイルに非常に近いことが解った。次回の攻撃編では、オランダ代表時というよりもアラゴネスの指揮したスペイン代表から影響を受けたようなフットボールとなっていた「マジック・ダイヤモンド」について更に突き詰めていきたい。


筆者名:結城 康平

プロフィール:「フットボールの試合を色んな角度から切り取って、様々な形にして組み合わせながら1つの作品にしていくことを目指す。形にこだわらず、わかりやすく、最後まで読んでもらえるような、見てない試合を是非再放送で見たいって思っていただけるような文章が書けるように日々研鑽中」
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