ここからは、実際の試合から切り取った画像を見ながら、どの程度ロッベンが孤立した状態でボールを受けられていたかをチェックしていきたい。
前半6分。アシュリー・コールは極端に内側に絞ってCBの守りきれないスペースのカバーに追われており、ロッベンは余裕を持ってボールを待てる状態にある。
前半8分。ローマの失点シーン。スローインからではあるものの、ロッベンにワンツーからエリア内まで侵入されており、この時はスピードに乗られた状態になってしまっていた。
前半10分、アロンソからのパスがロッベンに繋がる途中の一場面。ロッベンがサイドライン際に開いており、そこでボールを受けようとしている。
前半16分、結果的にCFの位置でフリーになれたことから、そのままシュートを狙った場面。ここでもロッベンはフリーで、余裕があることからエリア内にまで侵入している。
ある意味でローマの問題を象徴する場面が、この18分。ジェルビーニョは中盤のサポートをする意識があるので低い位置まで戻っているものの、やはりロッベンがフリー。そこをアシュリー・コールが気にしているので非常にバランスが悪い。
この場面はジェルビーニョでロッベンを見ることが出来れば、DFラインがバラバラになることを避けられた可能性が高い。ローマの守備における1つの大きな問題は、「アタッカーの守備タスクが整理されていなかったこと」に尽きる。特に若きイトゥルベは守備では所在なく動き回るだけで、中盤を助けることが出来なかった。カウンターで唯一気を吐いたジェルビーニョ、攻撃において出し手となったトッティの守備参加が少なかったことは仕方ないにしても、もう1枚が守備で機能しないことにはヨーロッパでの戦いは難しい。国内で攻撃的サッカーを展開する強豪が陥りがちな罠ではあるが、トップクラスの闘いでは11人が守らなければならないのだ。
また、恐ろしいことに徹底していたこの戦術をバイエルンは前半20分には捨てている。DF、特にCBがFWを捕まえることに苦しんでいると見たバイエルンは、ロッベンのサポートにもサイドから人を走らせた。そしてサイドに意識を集め、裏に飛び出したアタッカーでゴールを狙う。より直線的な形に変えることで、ただでさえ混乱に陥っていたローマの守備陣は脆くも崩壊してしまった。
この前半22分の場面は印象的だ。今までは受け手だったロッベンがボールを持っており、中盤のラームがDFに隠れるように死角から裏に抜け出そうとしている。2点目を中盤の飛び出しから沈めると、そこからはバイエルンが好きなように攻撃。様々なパターンから、ローマのゴールを陥れ続けた。セリエAでは圧倒的なパフォーマンスを続けるローマを大差で退けた理由は、ローマが弱いからではない。バイエルンが、世界の強豪チームの中でも別次元にいるからだ。
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この試合が示した恐ろしい事実は、ペップ・グアルディオラという指揮官がバイエルンというチームの選手達を理解し、力を100%引きだす術を構築しつつあることである。
バルセロナという枠に囚われていた部分のあった今までの彼よりも、柔軟になっている印象すら受ける。バルセロナを指揮していた後期では、ある意味で停滞を避けるように様々な戦術を試すように繰り返していたが、それが様々な選手の個性を生かしながら使っていくことが出来る「指揮官としての幅」に繋がったのだろうか。世界の頂点に最も近い指揮官の1人でありながら、彼は歩みを止めようとしない。ユップ・ハインケスが打ち立てた三冠という伝説に並び、そして超えるために。
バイエルンサポーターは、再び三冠の夢を見ることが出来るのかもしれない。
筆者名:結城 康平
プロフィール:「フットボールの試合を色んな角度から切り取って、様々な形にして組み合わせながら1つの作品にしていくことを目指す。形にこだわらず、わかりやすく、最後まで読んでもらえるような、見てない試合を是非再放送で見たいって思っていただけるような文章が書けるように日々研鑽中」
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