ペップがこの試合で見せたのは、守備的なアプローチである。

確かにこの日、攻撃面では物足りず、いつものボール支配率には遠く及ばなかった。その点に関してはキャプテンのラームも不満を口にしている。

ただし、そのぶんドルトムントにボールを持たせることによって、得意の形を作らせなかったとも言える。猟犬のように走り回るミュラーと弱点を知り尽くしているレヴァンドフスキが相手のビルドアップを阻害した。それにより苦し紛れに蹴られたボールはボアテングが弾き返し、アロンソが拾った。

これらの守備に関してペップとラームは満足ということを口にしている。結果的に相手に与えた決定機は後半15分のロイスのシュートのみで、それも今までのようにカウンターを食らったという種のものでもなかった。

一方の得点シーンはボアテングの一本の縦パスからレヴァンドフスキが凄まじいキープ力を見せつけて、生まれたものだった。さながらドルトムントの得点パターンのようでもあった。多くのチャンスを作り出したというわけではなかったが、この日のバイエルンの守備を持ってすれば、この1点は大きすぎた。

試合終盤ではバイエルンは後ろに5人を並べ、ブロックを作り上げた。それはとてもペップが好んでいるとは思えない、いわゆる「バスを停める」というやり方だったはずだ。ドルトムントが押し込んできたので、やったという受動的とは思えないほどの堅牢さであり、ひそかに練習していたのではと思わせられる。

ロッベンとリベリー不在、更にはドルトムントが相手という条件が重なり、生まれた策だったのかもしれないが、いずれにしろペップが新たな幅を見せたということには大きな意義がある。

堅い守備を生かしてから、レヴァンドフスキを生かしてのカウンター。

このやり方で2年前、黄色の戦士たちは「白い巨人」を打ち破り、欧州に一大ムーブメントを作り上げた。これがバイエルンでも出来ることを再発見したペップはいかにして欧州の舞台に再挑戦するのか見ものだ。


筆者名:平松 凌

プロフィール:プロのフットボールライターを目指して、日々修行中。現在自分が何を書くのを得意としてるのか模索しています。自称国内屈指のバイエルンファンであり、話題に事欠かないチームに感謝してツイッターでは情報配信しています。
ツイッター: @bayernista25

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