魂の売却を拒否するクラブ

新生SVアウストリア・ザルツブルクは7部リーグからの再スタートを余儀なくされた。

しかし2006-07シーズンに7部、2007-08シーズンに6部、2008-09シーズンに5部、2009-10シーズンに4部で優勝と、破竹の勢いで3部にまでジャンプアップ。そこからしばらく停滞したものの、昨シーズンついに2部昇格を決めたのである。

クラブの誕生から10年、いよいよアウストリアにとっての“悪の枢軸”、レッドブル・ザルツブルクが頂点に君臨するブンデスリーガまであと一息というところまできた。

だがその前に、10クラブで昇格を競う2部リーグにはFCリーフェリンクがいる。彼らは元々USKアニフという名のクラブだったが、2012年にレッドブルに買収され、レッドブル・ザルツブルクの“ファーム”として生まれ変わったチームだ。

つまりアウストリア側から見れば奥川の所属するリーフェリンクもまた「絶対に負けられない」相手であり、その一戦は間違いなく「ダービー」なのだ。

カーディフを買収したマレーシアの富豪がクラブカラーを変更しようとした2012年に“近代フットボールくそったれ”とバナーを掲げたアウストリアのウルトラス

その両者が8月以来再び顔を合わせることになったのが今回の試合であり、熱狂の理由はその成り立ちにあった。そして、そんな“因縁の一戦”で奥川は2アシストを決めたのである。

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