それぞれの主張に「乗れる」組織、「乗れない」組織

もう少し、二人の主張に沿いながら分析しましょう。

田嶋は「育成日本の復活」を掲げました。U-23男子代表のリオ五輪出場決定は、苦戦が続いていた育成部門に明るい希望を与えたでしょう。

そう考えると、「傘下・加盟団体」のうち、高校生(第2種)・中学生(第3種)に関わる各団体はJFAの各委員会と関係が深いので、多くが田嶋支持に回る可能性が高いです。育成の中核である「JFAアカデミー」が設置されている府県の各協会も田嶋新会長による支援強化を望むでしょう。

また、欧州クラブとの間で選手移籍が多く、冬の気候や施設面によるクラブ運営への制約が少ないJ1クラブも、田嶋の「Jリーグ2019年秋春制移行案」に賛同すると見ています。

一方、この早い秋春制移行は、やはり寒冷地からの批判を受けるでしょう。「Jヴィレッジ」がある福島を別として、豪雪地帯の協会にとっては「雪国でもサッカーが出来る環境の整備」を示した原の提案の方が現実的に見えるのではないでしょうか。

評議員会に参加するJ1クラブが2015年の18クラブから選ばれていて、新シーズンよりも寒冷地のクラブが多いというのも、巡り合わせの一つです。Jクラブとの人脈が深いのも原の強みです。

そう考えて、評議員を出す各団体に私の「予想」を当てはめたら、田嶋も原も15-20票の「固定票」を持っていると推測できました。

一番予測しにくいのは寒冷地以外の各都府県協会です。秋春制でも一応対応が可能、育成強化や国際化が重要なのも承知、しかしグラスルーツプレーヤーの取り込みも含めて自分たちの課題解決に力を貸して欲しい……となると、どちらを選ぶかは代議員個人の意向にも左右されそうです。

田嶋には「理事会での最多得票」という大義名分がありますが、まだ50代の田嶋より年上も多い地方のトップにどこまで通用するかは、もう何とも。勝負は五分五分、本当の試合と同様にタイムアップの笛が吹かれるまで分からないですね。

【次ページ】二人の弱点-「インポシブル」と「アンバランス」