投票行動予測-決めきれなかった田嶋、追い上げる原?

さあ、ここからが本当にしびれる部分です(苦笑)。

今回の選挙では、理事会は候補者一本化による事実上の会長選出という権限は失いました。しかし、候補者の認定資格には理事1名以上の賛成が必要で、かつ理事会投票での最多得票者が「理事会推薦候補」となるという点で、一定の影響力は維持しました。

21日の定例理事会で示された結果は、「田嶋19票、原9票」。これによりJFA理事会は田嶋を会長選での理事会推薦候補として決定し、同時に代議員7名以上の推薦と理事1名以上の賛同を得た原も正式な候補者として承認しました。

こうしてみると、やはり31日の評議員会投票でも田嶋有利か……とは言い切れないのが、今回の選挙だと見ています。

それは、28名の理事と75名の評議員の構成に大きな違いがあるからです。両者の比較を見てみましょう。

<図1>理事会(上側)と評議員会(下側)の出身母体別人数



出典:JFA公式サイト「組織」内、「理事会」「評議員会」
「理事会」での会長(1)・副会長(3、うち1はJリーグ)・専務理事(1)以外の各種別は常務理事(5)と理事(18)から分類。「評議員会」の「J1クラブ」は2015年シーズンが規準。

理事会では会長・副会長・専務理事なども投票権がありました。また、地域協会やJリーグから選ばれた理事以外の大半はJFAの各委員会で委員長(朝日新聞シンポジウム登壇者の北澤豪は広報委員長)を務めていて(例外は「学識経験者」の日比野克彦(美術家)と鈴木寛(政治家、元文部科学副大臣))、国際化や育成強化などを進める現在のJFAの方針、言い換えれば田嶋がその構築に深く関わってきたシステムを内部で熟知する立場にあります。

しかし、理事会の投票では原に9票。原自身を除き、8人が田嶋よりも原を支持したわけです。すると、「開かれた協会」のスローガンによって原が重視すると約束した全国9つの各地域協会の代表者のうち、かなりの数がその訴えに応えた事になります。そして、会長を選出する評議員会では、この地域協会を作っている47都道府県の協会から集まった評議員が、全体の約6割を占めているのです。

もし理事会投票で圧倒的に田嶋有利だったら、その流れは変わらなかったでしょう。しかし、この「19対9」は、評議員会の結果予測をとても難しくしました。

【次ページ】それぞれの主張に「乗れる」組織、「乗れない」組織