改めて、リオ五輪のスウェーデン戦での彼のプレーを見てみよう。

先発で出場し、90分に渡って攻守に躍動。その中でも、誰もが思い出されるプレーといえば矢島へのアシストとともに、ルーレットから左サイドへ展開した場面だろう(動画6:19から)。

スタンドからも歓声が揚がった場面。大島の優れている点は、ルーレットで回った後、パスの直前にしっかり「判断」をしていることだ。

U-23代表、そして川崎でもプレースキックを蹴ることがほとんどないように、大島はキックの精度が特別高いわけではない。それでも味方に良いパスを送ることできるのは、ボールコントロールの技術に加え周囲の状況を細かく見定め、素早くプレーとして実行しているからである。

そして、彼の判断の速さは攻撃にとどまらない。課題の一つであった守備面でも今シーズンは成長。攻守の切り替えが速くなり、寄せの厳しさやボール奪取力、さらにポジショニングも良くなった。

仮にA代表で考えた場合、ポジションを争う上でライバルになりそうな柏木陽介と比べると、攻撃よりもこの守備の部分がアドバンテージとなり得るだろう。それは、普段から4バックの川崎でプレーしている大島に対し、柏木の所属する浦和が3バックということもある。

リオ五輪における塩谷司の例を挙げるまでもなく、4バックと3バックでは選手の距離感やポジショニング、対応の仕方が異なる(そこにはもちろんそれぞれのチーム、試合での約束事もある)。集まってすぐに試合を行うA代表では、現体制下においても普段から4バックのチームでプレーしている選手が優位に見え、その辺りがハリルホジッチ監督の大島の成長を喜ぶコメントにも表れているといえそうだ。

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