3. バルサの中盤は人員過多
3つ目の懸念は、バルセロナの中盤自体が人員過多なこと。
現在、バルセロナのMFは5人。来シーズンからはセルジ・ロベルトの中盤復帰も計画されている。もしここにヴェッラッティを加えれば、合わせて7人となる。売却の可能性があり、ウイングでの起用が多いアルダ・トゥランとラフィーニャが対応可能と考えるとのべ9人が中盤にひしめき合う状態になり、明らかな人員過多である。
余剰人員を売却しても収入は知れているし、うまく売却できなければ不満分子を生みかねない。さらに仮に1年目を終えたばかりのアンドレ・ゴメス、まだ経験の浅いデニス・スアレスを売却し、彼らが移籍先で開花した上でヴェッラッティが失敗したら…。今季以上の悪夢であり、バルセロナ自慢の育成ブランドの崩壊を意味する。
つまり、ヴェッラッティ失敗のリスクは意外に高いのだ。そもそもセルジ・ロベルトを中盤に戻すなら、右SBを補強しなければならなくなるし(ヴェッラッティに大金をかける余裕はない)、さらに言えばゴメスやD・スアレスはまだ伸びしろが十分に残されている。せっかく才能のある選手を持っているのだから、高いカネをかけて彼らを潰すようなマネはしない方が良いのではないだろうか。
4. スタイルとの親和性の低さ
4つ目はバルサスタイルとの親和性の低さ。
シャビの退団以降不在の本格派司令塔としてヴェッラッティに期待する声は多い。しかし、ヴェッラッティの最大の武器はロングパスで、シャビというよりはピルロに近い選手だ。しかも彼の数少ない悪癖はバルセロニスタが最も忌み嫌う「ボールの持ち過ぎ」。もしヴェッラッティが“ティキ・タカ”の復活を導くと考えているなら、大きな思い違いだと認識すべきだ。
5. 大した強化にならない
5つ目は、はっきり言って大した強化にならないのではないかということだ。
ヴェッラッティが加入すれば、セルヒオ・ブスケッツ、アンドレス・イニエスタ、ヴェッラッティの3人で中盤を構成すると考えられている。しかし、"MSN"を解体しない前提に立てば、走れて技術力もあるラキティッチの起用は必須になってくるのではないだろうか。
今季はインサイドハーフにアンドレ・ゴメスを起用していたが、機動力が低くチーム低迷の要因になっていた(そもそもゴメスは体格的にもアンカーだろう)。エルネスト・バルベルデ新監督の意向はまだ見えてこないが、MSNを解体しないなら、ヴェッラッティはイニエスタとポジション争いをすることになるというのが自然な見方だろう。
さすがにイニエスタとヴェッラッティを入れ替えたところでお釣りがくるとは思えないし、万が一イニエスタとヴェッラッティを同時起用しても今季のように守備のマイナスが露呈されるだけ。選手層を無駄に厚くするだけで終わる公算が高く、掛かる費用を考えればコストパフォーマンスの悪い補強になりかねない。