難民が殺到したのは、社会保障が充実しているそのドイツだった。しかし、欧州は「シェンゲン協定」によってEU域内での移動の自由が認められており、難民の中に潜伏した過激派などの勢力が欧州全土に広がる。

程なく、フランス対ドイツの国際親善試合が行われていたスタッド・ドゥ・フランス付近で同時多発テロが起き、以降、現在に至るまで西欧の各地でテロが頻発することに。今年5月には、シティとユナイテッドが拠点を置くマンチェスターの地で開催された人気歌手アリアナ・グランデさんのコンサートで爆発事件が起き、若者ら22名が犠牲となった。

欧州というのは思いのほか小さい。サッカー界ともかかわりも到底、無関係とは言えない状態となっている。

このような事件が発生するたびに、各クラブ、選手、関係者はお悔やみの言葉や家族への支援を述べるとともに、犯人を糾弾し、卑劣なテロに屈しないことを宣言する。すると、SNS全盛の時代だけに、一瞬にして拡散され拍手喝采を浴びる。

しかし、私はずっとそのことに苛立ちにも似たもどかしさを感じてきた。なぜかといえば、難民が大挙して押し寄せることになった2015年秋以降における、サッカー界の対応にある。

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