あの「講義」の意図とは?

今回のキリンチャレンジカップのメンバー発表において、ハリルホジッチ監督は「講義」とも言えるプレゼンテーションを行った。

そこで具体例として用いたのは、直前に行われたチャンピオンズリーグのパリ・サンジェルマン対バイエルン・ミュンヘンのデータだった。

パリ・サンジェルマンは30%台というボール保持率であったが、バイエルンを相手に3得点を奪って快勝したという試合である。

その中で唯一パリ・サンジェルマンが大きく上回っていたのがデュエル。つまり「対人戦の勝率」であった。

これが「ポゼッションは勝てない、早い攻めとデュエルが重要」というポゼッション信仰への“カウンター”だという意見は多かったように思う。

しかし、筆者は『デュエルの強さがないポゼッションは脆弱』という意味なのではないかという解釈をしていた。注目すべきはパリ・サンジェルマンではなく、バイエルンの方のデータだったのではないかと。

多くのジャーナリストが分析した2014年W杯のアルジェリアも、韓国戦などではちゃんとパスを回して攻めた時間があった。コートジボワールでも特筆するほどカウンター志向ではなかった。ハリルが「強硬な反ポゼッション派」ではないことは明白である。

あの講義は、要するに『バイエルンでもデュエルで上回らないと勝てないのに、日本の実力じゃポゼッションは絶対ムリ』というのをかなり厚めのオブラートに包んで伝えたのではないだろうか。

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